- 発行日 :
- 自治体名 : 滋賀県近江八幡市
- 広報紙名 : 広報おうみはちまん 2026年1月号
■文化財の保存修理(9)
長命寺参詣(さんけい)曼荼羅(まんだら)・前編
今回は令和4~6年度に修理を行った重要文化財長命寺参詣曼荼羅(甲本・乙本・丙本の3鋪(ほ))を、1月号・2月号で紹介します。
参詣曼荼羅とは、霊場参詣の案内図のような大衆向けの絵図で、絵画によって分かりやすく仏教の教えを広める「絵解き」に用いられた物です。寺院の再建に向けて勧進(かんじん)を行っていた僧が小さく畳んで持ち歩き、何度も広げて人々に見せながら絵解きをしたと伝わっています。境内や門前町を中心に多くの参詣者で賑わう様子や、寺社にまつわる霊験譚(れいげんたん)や縁起、周辺の地に伝わる伝承なども描かれ、独特の世界観で人々を参詣に導きました。
長命寺参詣曼荼羅は、5点の現存が確認されています。長らく知られていた長命寺本1幅とメトロポリタン美術館にある1隻(せき)に加え、平成21年の調査で長命寺の塔頭(たっちゅう)(本寺を補佐する子院、脇寺)である穀屋寺から甲本、乙本、丙本と呼ばれる3鋪が発見されました。この時の調査では、長命寺参詣曼荼羅などがいずれも小さく折りたたまれたまま見つかり、使用当時の形状がよく分かります。大きさはそれぞれ異なりますが、広げると表装を含めた全体で縦107~205cm、横160~190cmほどの大きさがあり、最も小さな甲本は縦24・0cm、横39・0cmに折り畳まれていました。それぞれ本紙を囲むように裂(きれ)で表装されており、四方に通された紐によって吊ることができる特殊な表装形式となっていました。また、参詣曼荼羅の甲本および丙本の総裏紙上には、穀屋寺の所有であることを示す墨書が見られました。ともに見つかった古文書数千点や熊野観心十界曼荼羅2鋪を含めた穀屋文書群を、令和4年度から順に修理しています。
今回実施した修理より、いくつかの工程をとりあげて紹介します。
修理工程の初期では、表装裂と本紙を解体します。長年多くの人によって使用されてきた中で蓄積された汚れをクリーニングし、全体の汚れを取り除くことで、見た目が綺麗になるだけでなく、酸性劣化を抑制し、カビや虫害の拡大を防ぐ目的もあります。また解体した本紙を継ぎ直す際に、修理前に見られた写真のような紙継ぎ箇所のズレが修正されました。
次号に続きます。
文(文化振興課・永福)
※写真は(株)坂田墨珠堂提供(写真は本紙をご確認ください)
※資料の所有は長命寺(現在は滋賀県立安土城考古博物館に寄託)
