くらし 守山てんこもり

■夫婦も米づくりもイベントも、結局、人の縁だよね
令和8年に20周年を迎える「米づくり体験」のイベントに農地を提供、家族経営の米農家「浦谷(うらたに)農園」

約35ヘクタールの農地で米作りをしている、木浜町の浦谷農園(浦谷 善隆(うらたによしたか)さん、由紀(ゆき)さんご夫婦)は、SGホールディングスと提携して、約20年前から水田の一部で「米づくり体験」のイベントを開催しています。

●春秋の稲作体験イベント 都会っ子も地元っ子も
木浜町の浦谷農園は、家族で35ヘクタールの田んぼを管理しています。このうち、約3000平方メートル(3反分)で、都市部の親子などを招いた春の田植えと秋の稲刈りの体験イベントに提供しています。
話が持ち上がったのは約20年前。市内にSGホールディングス(当時の佐川急便)の営業所や保養施設などがあり、全国の従業員が守山に来ていました。
風に揺れる稲穂、田んぼで見るホウネンエビや昆虫などの生き物。SGホールディングスは、農家の暮らしに触れ、食の大切さをたくさんの人に考えてほしいという思いから、従業員や一般の人を対象とした稲作体験イベントを開催したいと依頼したそうです。
参加した人たちは大喜び。それ以来、ずっと続いています。

●琵琶湖の漁師から農家へ 親子三代で築いた田園風景
土着の大規模農家は先祖代々の農地を守っていることが多いですが、浦谷さんの祖父は漁師でした。琵琶湖の漁師は鴨猟(かもりょう)をすることもあります。けがをした鳥を保護するような優しい性格で船が苦手だった父は、一念発起の脱サラで農家になったそうです。当時から米と野菜の農家だったといいます。
二代目の善隆さんも関東の農業専攻科で学び、農業に必要なさまざまな資格を取得して滋賀にUターン、県内のJAに就職してサラリーマンを経て、家業に従事することになったそうです。善隆さんは「一度社会に出て当時の上司にお世話になったり、いろいろな経験を積んできたことは、今も私にとっても大きな力になっていると思います」と話していました。
家族が力を合わせ、他の地元農家と協力しながら、145ヘクタールもある木浜の田園風景と環境、米の生産を守っています。

●米もイベントも人も「縁」 大切に守り続けていく
善隆さんは、農地と一緒に米作りイベントの田の提供も受け継ぎました。善隆さんは「米、ぬか、わら、稲には捨てるところが何もない。それだけ昔から大事にされてきた。小さな野生の王国。中でも田園から臨む景色は一番の魅力です。それを少しでも伝えられたら」と話していました。
善隆さんは、米との出会いも妻との出会いも、イベントに参加する人との出会いも大切な「縁」だと思っているそうです。でも、一番の「縁」は、妻である由紀さんとの出会い。「都会から嫁いで、田舎の付き合いも仕事もすべて継いでくれました。ものすごく助けてもらっています」と話していました。由紀さんは車の免許も農機を動かす特殊免許も、守山に来てから取得したとか。結婚前は写真の仕事をしていたので、イベント参加者に配信する写真の撮影でもセンスの良さが光っているようです。
来年は稲作体験のイベントも20周年。最近は気候も難しく、農家は大変なことも多いけれど、浦谷さん夫婦は「田んぼとおいしいお米を守り、伝え続けていきたい」と意欲を語っていました。

■米づくりの体験は「楽しい」以上の心の栄養
from SGホールディングス 岩村 寿子(いわむらひさこ)さん
都市部では田畑の風景も少なくなり、子どもだけでなく大人も農業を身近に感じることができなくなっています。
そんな中、平成19年から環境行動の一環として、稲作体験イベント(田植え体験、稲刈り体験)が始まりました。
毎年、地元の子どもたちや当社グループの従業員・その家族など、約100人が参加しています。
参加者からは、「良い経験になりました」「子どもが将来農業に興味があり、体験させられたことが良かった」「子どもも楽しすぎー!!と言っていました」など、たくさん喜びの声が寄せられています。
田植えから稲刈りまでの生育期間は浦谷さんのお世話になっており、イベント開催時にも多くの面でご協力いただいており、このイベントが続けられているのは、浦谷さんの支えがあってこそです。
来年20周年の節目を迎えますが、これからも自然と地域と人をつなぐすてきなイベントを継続していきます。