健康 シリーズ健康エッセイ vol.145

■桜が散ると増える足部の痛み
山下医院 山下豊医師

今年も素晴らしい桜を楽しめたでしょうか。日本に生まれて良かったと感じられる瞬間ですね。暖かくなってくると、足部の痛みを訴える患者さんが急に増えます。コロナ禍と寒さで運動不足になっていた所に、急に活動的になってきたという事もあり、痛風発作を起こして来院される方が多くおられます。暑い日に外で作業をして発作を起こす方が多いようです。その時は、関節リウマチなどの疾患との鑑別診断も重要です。
多くの汗をかくことで水分を失い、血液が濃くなって「血液中の尿酸濃度が急に上昇する」のがその理由です。生活習慣病に典型的な体形をしていなくても、暑い日にランニングや畑仕事などをして、その夜に痛風発作になることがよくあります。普段から正常値よりも高い尿酸値になっている人はもちろん、血液中の尿酸値が1デシリットル当たり7ミリグラム未満の方でも十分起こりえます。
予防法は水分補給です。これは、脱水や熱中症の予防にも共通します。スムーズに体内に吸収させるためにも、ミネラル入りのスポーツドリンクが良いかと思われます。
痛風発作は「急に尿酸値が上がった」場合だけでなく、「急に下がった」場合にも起こります。そのため、今実際に発作を起こしている人へは消炎鎮痛剤が必要ですが、尿酸値を下げる薬は使えません。痛みが長期化する恐れがあります。激しい痛みは適切な治療をすれば1週間以内に治まるため、深刻に考えない人も多く、軽く考えがちです。
痛風そのものが命にかかわることはありませんが、放置すると結晶化した尿酸が皮下組織に沈着する「痛風結節」や尿路結石、腎機能の低下といった合併症を起こす危険性が出て来ます。また、糖尿病や高血圧など他の生活習慣病との関連も深く、やがて脳梗塞や心筋梗塞などのリスクも高まります。痛みが治まった後の高尿酸血症の治療が非常に重要です。