- 発行日 :
- 自治体名 : 大阪府豊中市
- 広報紙名 : 広報とよなか 2025年(令和7年)12月号
■豊中発掘の奇跡の化石
今月号の表紙にもなっている待兼山。その周辺で出土したマチカネワニ化石は、良好な保存状態と学術的価値の高さから、2025年9月に国の天然記念物に指定されました。大阪大学総合学術博物館の元館長である江口太郎名誉教授(大阪大学)にお話を伺いました。
◇見て、感じる ワニの化石が語るもの
大阪大学総合学術博物館元館長
江口太郎名誉教授(大阪大学)
◇地中から現れたのは“ワニ”だった
マチカネワニ化石が発掘されたのは1964年のことです。大阪大学理学部棟の建設現場で、2人の青年により発見されました。発掘直後の骨はピンクがかっていたようですが、空気に触れることで酸化して黒くなり、この色味に落ち着いたと聞いています。
また、この化石は流木の化石と一緒に出土し、付近を掘り返してもこの“1体”しか出てこなかったそうです。そこから推測できるのは、上流域に生息していた約8mものワニが流木にぶつかって気絶し、海岸沿いまで流されてきた可能性があるということです。発見当時の証言や状況からいろいろな仮説を立てられるところにロマンを感じます。
◇計り知れない“価値”
日本は酸性土壌なので、一般的に骨は溶けやすいとされています。そのため、化石が残っていたことが奇跡なんです。このマチカネワニ化石は「タイプ標本(ホロタイプ)」で、新種の学名の基準となる唯一の骨格標本です。実物の骨格があるからこそ、小さな骨が出土した時にどの生物のものであるのかを確認できるんです。国内外の研究者にとって、正確な研究のための非常に重要な存在です。
◇これからも研究は続く
化石の研究では、形を比較して系統や分類を考えます。しかし、顎の形がこれまでのワニの特徴と異なるので、マレーガビアルという種類の近縁で新種である「トヨタマヒメイア」と分類されています。近年はDNAを研究することで、より詳細な分類が可能となったため、別の系統に再分類される可能性もあります。これがいまだ「謎」とされている部分で、答えが出るのはまだまだ先です。研究は日々進んでいて、近年骨の分析からこの化石のワニがオスであったことも判明しています。
◇幸運な化石が「国天然記念物」に
もし61年前に、2人の青年がこの化石を当時の大阪市立自然科学博物館に持ち込まず、当時の大学教授が発掘の判断をしていなければ、見過ごされていたかもしれません。また、これまで研究者が大切に守り続けたこの化石を、この博物館で公開していなければ今回指定もされていないでしょう。大阪大学公式のキャラクター「ワニ博士」の制作もそうですが、たくさんの人の思いが、マチカネワニ化石の知名度の向上につながっているのです。大切にされてきた“幸運な化石”だと感じています。
40万年前に生きていた存在が目の前にいるという驚きを、皆さんに感じてほしいです。ぜひ、化石の展示を見に来てくださいね!
■今回の特集にあわせてマチカネワニ図鑑を作りました!
図鑑を持って見に行ったり、おうちでゆっくり読んでみてください。
■ぼくらのモデルにもなったマチカネワニ化石をぜひ見に来てね!
豊中市公式キャラクター マチカネくん
大阪大学公式マスコットキャラクター ワニ博士
▽大阪大学総合学術博物館
化石標本及びレプリカを所蔵
場所:待兼山町1-20(大阪大学豊中キャンパス内)
▽文化芸術センター
レプリカを所蔵
場所:曽根東町3-7-2
問合せ:社会教育課
【電話】06-6858-2581
