文化 【たかつき歴史アラカルト129】未盗掘古墳の魅力-闘鶏山(つげやま)古墳-

氷室町にある闘鶏山古墳は、今から約1,700年前に造られた全長88mの前方後円墳です。三島を代表する弁天山古墳群の歴代王墓とは谷を隔てて西側の丘に位置し、傍系の王墓とも考えられています。この古墳の特徴は、埋葬されてから墓荒らしに遭うことなく現在まで保存されてきた未盗掘古墳であることです。平成14(2002)年の確認調査で、遺骸を納めた木棺を覆うように石積みで構築された2つの竪穴式石槨(たてあなしきせっかく)が手付かずで残されていることが判明し、学術的な価値の高さから同年中に国の史跡に指定されました。
2つの石槨の天井部の小さな隙間からカメラを入れて撮影したところ、内部に土が流入することなく空間が保たれていることが分かりました。最初に造られた第1石槨には3面の銅鏡、鉄製の武器や武具、碧玉(へきぎょく)製の装身具、沖縄周辺で採れる貝などの副葬品のほか、北枕で安置された被葬者の遺骸が良好に残されていて、近年研究が進むDNA分析で古墳の主に関する情報が得られるかもしれません。後に造られた第2石槨では木棺の仕切板などが腐らずに形を留めていたことが注目されます。
未盗掘古墳の魅力は、こうした遺物に加えて埋葬に関わる多くの貴重な情報がそのままの位置に残されているため、他の古墳にはない新発見が期待されることです。1,000年以上にわたり密封されてきた石槨は、古代のタイムカプセルのようなものです。日本で唯一と言える貴重な情報と遺物を安全に取り出し後世に伝えるため、調査の進め方を慎重に検討しています。
(埋蔵文化財調査センター)