くらし 人権ほっと(220)

「あなた仕様の日常を問う」
大阪教育大学 薮田 直子

8月号では、「マジョリティ特権(privilege)」という概念を紹介しました。社会の中でマジョリティの人(主流派の人、普通とされる人)が「労なく手にできること・もの」が特権です。ここで言う「特権」とは、追加で得をする、何か優遇されていることだけを言っているのではありません。例えば、社会の中で差別を受けなくて済むということも「マジョリティ特権」のひとつと捉えることができます。いいえ、本来ならその権利は誰にでもあるはずなのですが…。
このような社会構造を「傾いたサッカーコート」だと例える人もいます。コート自体が、自分が入れたいゴールの方に傾いていたとしたら?面積は同じでも、いくらか有利になるはずです。マジョリティ特権を意識するというのは、この傾きに気が付くこと。
小児科医で、脳性麻痺の車いすユーザーである熊谷晋一郎(くまがやしんいちろう)さんは、自立とはどういうことか?という問いを投げかけ、自身の被災経験を事例に挙げます。例えばビルの5階で地震に遭ったとき、あなたならどのように避難しますか?エレベーターが止まっても、階段やはしごを使うという人もいるでしょう。これを熊谷さんは、3つの依存先を持っていると整理します。しかし、エレベーターしか依存先がない熊谷さんは逃げ遅れました。
熊谷さんは「健常者は何にも頼らずに自立していて、障害者はいろいろなものに頼らないと生きていけない人だと勘違いされている。けれども真実は逆で、健常者はさまざまなものに依存できていて、障害者は限られたものにしか依存できていない。」と説明します。(『TOKYO人権』2012年56号P.3より引用)
「あなた仕様」になっている日常、あなたのサッカーコートの傾きを確認しましょう。その上でより多くの依存先を実現する方向へ目をやりたいものです。

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