- 発行日 :
- 自治体名 : 大阪府藤井寺市
- 広報紙名 : 広報ふじいでら 令和7年12月号
【アイセルシュラホールに大きな前方後円墳ができたよ! 6 ジオラマづくりの現場を訪ねて】
アイセルシュラホールにできた大きな前方後円墳のジオラマについて、その形や斜面の葺石(ふきいし)、立て並べられた多くの円筒埴輪(えんとうはにわ)、さまざまな形をした形象埴輪(けいしょうはにわ)や、埋葬施設などについて述べてきました。また、それらが表現している古墳時代、千六百年前の信仰についてもお話をしてきたところです。
このジオラマは、古墳時代当時の形を現代の技術、方法で、40分の1の大きさにつくったものですが、最終回では、現代のジオラマづくりについてお話をしたいと思います。
ジオラマをつくる企画段階で、まず、古市古墳群にたくさんある前方後円墳の内、どの古墳をモデルとするかの検討を行いました。当初は、二重の濠(ほり)と堤(つづみ)を備え、内濠の中に島状遺構の存在が確認されている津堂城山古墳をモデルとする案もありました。その後、検討を重ねる中で、大きな古墳つくりの最盛期の前方後円墳の形がきれいに残っている、仲姫命陵(なかつひめのみことりょう)(仲津山(なかつやま))古墳をモデルとすることに決まりました。ちなみに同古墳は、藤井寺市内で墳丘の長さが最も長い古墳でもあります。
モデルとする古墳が決まると、墳丘の平面図と立面図を制作しました。これは、ジオラマの基本的な設計図となるもので、『古市古墳群測量図集成』のレーザー測量による地形図をもととしました。
設計図をもとにジオラマの形をつくったあと、斜面に葺石を施す作業にとりかかりました。本物の石を葺く方法は、基底石(きていせき)と区画石列(くかくせきれつ)を並べたうえで、その間を一回り小さな石を充填していく方法がとられています。基底石は一番下に横一列に並べるのですが、区画石列の割り付け方については、発掘調査でその方法が確認できている京都府の鴫谷東(しぎたにひがし)1号墳の事例などをもとにして、大阪府立近つ飛鳥博物館にあるジオラマも参考にしました。ちょうどよい大きさの石を選別してボンドで貼り付けていったのですが、斜面全体を覆うのは、かなり大変な作業でした。
ジオラマに立て並べた円筒埴輪などは多くの本数が必要となり、機械で大量生産していきました。ところが、形をつくるのは機械でできたのですが、表面に埴輪を作った当時の焼け目を表すための黒い着色は、すべて手作業で行うことになりました。このため黒い焼け目は1本1本異なり、リアル感を醸し出しています。
以上、ジオラマづくりの現場から、制作の一端をご紹介しました。それにしても改めて思うのは、実物の40分の1のジオラマ制作だけでも様々な工程があり、多くの時間と作業が必要となるということです。実際の大きな前方後円墳をつくるには、実に莫大な作業量が必要であったことが実感できるプロジェクトとなりました。
(文化財保護課 新開 義夫)
