文化 野草散歩(181)

■キンラン(ラン科)
汗にまみれ、喘ぎながら登るまさに苦行の道すがら、思いがけなく目の前に現れた貴婦人のような花姿。やはりキンランに出逢った時の感動は忘れることができません。花はそれぞれが美しく、感動もそれぞれの植物からたくさんいただいてきましたが、見事に開花した金色の花に出逢えた喜びは、やはり格別のものがあります。
キンラン(金蘭)はラン科の多年草で高さ40~50cm、葉は互生(互い違いに葉が出る)し、長さ8~10cm、幅2~4.5cmで葉柄は無く、葉先は尖って基部は茎を抱いています。また、幅広の葉は葉脈が明瞭に浮き出ています。花は茎の上部に3~10個の黄色い花を付けますがこれが花名の由来のようです。花は半開きで咲き、花弁2枚は側花弁、後ろ側の突出した1枚は背萼片、少し小さい2枚は側萼片と呼ばれ、5枚の花弁や萼片はふっくらと内側の苞を包むように咲いています。苞は小さく三角形で中心の唇弁は円心形、内面に橙赤(だいだいあか)色の隆起線が5~7本あります。苞の下部は花芯で、膨らんだ鞘は花柄のようにも見えます。また、キンランは環境省が絶滅危惧種II類に指定しているのをはじめ、多くの地で貴重種に指定されています。ラン科の植物は木の根や落ち葉などから発生する菌類を糧として生きていることは知られていますが、人間によって掘り取られていく状況も後を絶ちません。菌類を栄養とするラン類は、例え数年間生きていても異なった菌類の場へ移されると消えてしまいます。キンランを保護している或る里山では、開花か蕾の状態で花を摘み取ってしまうと聞きます。そのようにして守ってきた貴重種ですが、現在は鹿の食害であらゆる植物が消えていく状況です。落ち葉さえ見られない現在の里山は、今後、どのようになっていくのでしょうか。

文・写真 中澤博子さん