- 発行日 :
- 自治体名 : 奈良県宇陀市
- 広報紙名 : 広報うだ (2025年12月号)
■うだチャン番組放映のお知らせ
令和8年1月1日~3月31日まで、午後3時33分からうだチャン11にて放送の「歴史を活かしたまちづくりのこれからを語る」で、歴まち計画の解説と鼎談(ていだん)の一部が放映されます。ぜひご覧ください。
■浦西氏と小関氏と、宇陀の魅力と歴まちについて鼎談を行いました!
・宇陀市まちづくり推進課 歴まち計画担当者 森本 陽子さん
・榛原石田在住の歴史民俗学者 浦西 勉さん
・元榛原西小学校校長、祭文音頭保存会で音頭取りをする等、伝統行事の継ぎ手としても活動中。 小関 吉浩さん
森本:宇陀の魅力とは何ですか?
小関:宇陀は地形にバリエーションがあり、様々な集落があります。そして祭が、各集落のコミュニティ機能を強くしている。人のつながりが地域の力になるわけで、そこに魅力を感じています。
浦西:宇陀はひとつの空間に、それぞれ小さな文化圏を持っており、それが奈良県全体からみても、よく残っているので民俗の研究者としても魅力に思います。
森本:宇陀の歴史的風致の取材で寒施行(かんせぎょう)が印象的でした。
浦西:宇陀松山では、寒施行(大寒の前後に狐が飢えて悪さをするので、赤飯のお握りを作ってお供えする施しの習慣)が未だに残っています。この寒施行には、動物に対する施し、優しさと思いやりが感じられます。それが実際に残っていることが魅力だと思います。また、寒施行は民間の素朴な行事ですが、祭に伴う食べ物があります。美味しい体験を地域で共有することも伝統行事を残していく上で大事ですね。
森本:宇陀の食べ物といえば…
小関:お正月のきなこ雑煮ですね。
浦西:あの食べ方は、長い歴史の中で作り上げられたものです。大豆の粉に餅をくるむ。それが中世までたどれる歴史をもった食べ方なんです。地域の人は無自覚にしていますが、奈良県でも重要な民俗行事だとアピールしていいと思います。
小関:よそからしたら凄いことをやっている、と自覚できるようになると、地域への誇りやまちの財産になります。寒施行の食べ物も、行事食として身近に食べられるようになれば、地域活性化のネタになると思います。
森本:伝統行事は、最強の多世代交流と思います。知恵の継承や、仲直りの機会になるなど、移住者が地域に馴染むのに役立ついい仕組みです。
浦西:祭は教育の場所であり、宗教的感情もそこで呼び覚まされます。民俗学ではハレとよびますが、こうしたハレの日がひと月に1回はあり、皆で御馳走を食べようかな、という気持ちになる。そういうシステムが宇陀では生きています。都会にはありません。
小関:他にも冠婚葬祭は昔はコミュニティで行ったため、機能が維持されてきました。こうした地域のアイデンティティや結びつきは大事にしていきたいと思います。
森本:最後に、歴まちに期待することは何ですか?
浦西:いい事業だと思います。伝統を大事にして未来に残すという考え方は誰もが賛同するところだと思います。歴まちの啓蒙普及が地元と行政をつなぐきっかけになるのでは。
小関:これを使ってまちの力を育てたらいいと思います。住民が自分たちの集落のアイデンティティを育むきっかけになるのが、歴まちだと思います。
浦西:さりげなく行っているハレの意識が、実は重要なメッセージだったりします。過去の人の行動や思いが含まれているのが伝統行事なのでそれに気づいてもらうことが必要です。歴史があるから大事というのではなく、400年~500年前の記録にあるものが今も作られているということですから。中世の社会が宇陀にはまだ生きているような気がします。地域の方が秋祭りにかけるエネルギーは中世の気概を感じます。
小関:日常会話で、「会所で寄り合い」と言っていますが、「会所」も「寄り合い」も中世から続いている言葉ですよね。盆踊りの花笠も中世、風流がルーツですから。
森本:話は尽きませんが、この辺りでお開きとします。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
計画策定にあたり情報提供、取材受け入れをしてくださった皆さまにこの場をお借りしてお礼申し上げます。
問合せ:まちづくり推進課
【電話】82・5624【IP電話】88・9092
