- 発行日 :
- 自治体名 : 広島県庄原市
- 広報紙名 : 広報しょうばら 2025年5月号(No.242)
開館:9時~17時(年末年始休館)
■道後山植物誌ができました
比和自然科学博物館では、令和3年度より4カ年かけて実施し、道後山植物調査の成果を取りまとめた「広島県庄原市道後山植物誌」を本年3月に発刊しました。
比婆道後帝釈国定公園内にある道後山は、比婆山の東側に位置し、比婆山と同様に中国山地の尾根を形成しており、標高は1,268mに達し、寒地系植物が生育する山です。
植物に関する調査は、昭和6年に広島県山岳会発行の「道後山-登山と研究」により広島県で最初にその植物相が明らかにされ、昭和13年には生駒義博(いこまよしひろ)さんによる「ツツジの名所道後山の植物景観並びにその保存について」、昭和17年には掘川芳雄(ほりかわよしお)さんによる「道後山の植物」で報告されました。
今回の調査は、道後山植物研究史の始まりから90年以上を経過した道後山の植生と植物相の現状を調査し、その結果をまとめたもので、エゾヒゲノカズラなどのシダ植物17科98種、種子植物はミヤマムグラやハンゴンソウなど106科663種を記録しています。令和5年1月に逝去した中村慎吾(なかむらしんご)名誉館長も調査に深く関わっており、原稿作成を精力的に取り組みました。
道後山はブナ林が成立する環境ですが、今回の現地調査では、ブナ林が極めて少ないことが確認されています。古くから道後山においてもカンナ流しやたたら製鉄が広く行われていました。それによりブナ林が伐採され、その跡地に和牛放牧が行われたことにより、放牧地特有の「階段状群落(かいだんじょうぐんらく)と斑状群落(はんじょうぐんらく)(庭園状群落)」※が形成されていました。現在は放牧をやめたため、ススキ群団または自然低木群落へと変わっています。この植物誌では、このような道後山の歴史を写真と共に解説しています。
道後山の過去から現在に至る植物相の変容を記録したこの植物誌は、4月21日から比和自然科学博物館で販売(税込…2千円)しています。この植物誌により、道後山の自然に対する関心が高まり、自然保護に役立つことを願います。
※自然林で牛を放牧した際、牛が好んで食する植物の状況により、残された植物やその植物の育成状況によって、等高線に沿ったような階段状になったり、斑状になったりして形成された植物の集まり
問合せ:比和自然科学博物館
【電話】0824-85-3005