しごと しもまちキラリ

■アウトドアの達人 井上 桂さん
地域の自然や特色を生かした野外活動の実践や、人材育成への取り組みが評価され、県内初となるジャパンアウトドアリーダーズアワード2025優秀賞を受賞。自然のプロが語る、自然体験の魅力とは?

●やりたい! おもしろい! 自然の中にそれはある
▽修学旅行より楽しい 宿泊学習がここに
小さな手で川の水をすくい光る石を拾ったり、森の中で小鳥のさえずりに耳を澄ませたり。誰もが一度は、自然を舞台にした冒険に心弾ませた経験があるのではないでしょうか? そんな体験が学びや成長につながることを子どもたちに伝え続けているのが、エコピアの森下関・深坂所長の井上桂さんです。
井上さんは、アウトドアを専門に学び、環境学習や野外学習の機会の提供、指導者の育成まで、幅広く自然体験の大切さを指導しています。
井上さんが手掛ける宿泊学習の特徴、それは何と言ってもオーダーメードであること。既存のメニューの中から選んでもらうのではなく、参加者に合わせてオリジナルのプログラムを考えているのです。
「リーダーシップ、協調性、自立心。身に付けたい力によってプログラムが変わるのは当然です。例えば、協調性を身に付けるためにカヌー体験をするなら、2人乗りでこのコースにしよう、というように、目的に合わせてゼロからプログラムを作っています」と井上さんは話します。

▽子どものやってみたいスイッチをオン!
井上さんが関わるのは、当日活動を指導している間だけではありません。事前学習によって、より活動が充実するのだといいます。
「例えばテント張り。事前に私たちが学校に行って、写真を見せたり実物を触らせたりして、当日の活動をイメージしてもらう。すると、子どもたちはロープの結び方を練習して、覚えて、当日が楽しみになる。子どもたちにとっては、もう活動が始まっているんですね。子どもたちが能動的になれば、活動もより効果的になります」

▽自然の中でしかできない特別な体験を
「幼稚園児と散歩する途中で、鳥の死骸を見つけたことがありました。園児たちはみんな注目しています。せっかく関心を持ったものを見逃さない。なぜ死んでしまったか、みんなで考える時間になりました」
その日の状況によってプログラムが変わることなんて、井上さんにとっては当たり前。
「保育士を目指す学生の活動の日、川が増水していました。そこで、あえてヘルメットとハーネスを付けて川に入って、どれだけ水圧に耐えられるかを体験してもらいました」
どれも、その日でなければできない体験。人の手でつくれないものを素材にすることこそ、野外学習の最大の魅力なのかもしれません。
「ここには家や学校ではできないことがたくさんあります。やりたいことをしに来てほしいです」と、井上さん。
今は、秘密基地を一年かけて作ろうという計画が進行中なのだとか。想像するだけでワクワクが止まりませんね。

・優秀賞受賞
うれしさより先に、山口からもっと輩出したいという気持ちになったそう。

・みんなが笑顔に
さまざまな理由で体験機会が少なかった方が自然の中で学べるように、体験格差の解消に取り組んでいる。

・パックラフト
空気で膨らませる軽量のゴムボート。空気を抜けばリュックに入るため、登山にもぴったり。12人乗りサイズは日本で4艇だけ。

・指導者の育成も
退職しアウトドアの専門学校で学ぶ。「野外学習を学問として学んだ人に、施設を運営してほしい」と、井上さん。