文化 山頭火の魅力を訪ねて
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- 発行日 :
- 自治体名 : 山口県防府市
- 広報紙名 : 防府市広報 情報ほうふ 令和7年11月1日号
■光と影の対比が美しさを引き立てる
日の落ちる方へ 水のながれる方へ ふるさとをあゆむ 山頭火
表紙の句は、昭和9年(1934年)11月21日、防府天満宮の御神幸祭が執り行われた日に詠まれました。当時山頭火は小郡の其中庵(ごちゅうあん)に住んでいましたが、汽車で防府までやって来ています。日記には「宮市の天神祭万歳だ、よし、私も参詣しよう。」と書かれています。天満宮に参詣してお祭り気分を味わった後は、西に向かって佐波川にかかる新橋の方まで歩き、その道中では大行司小行司の行列を見たようです。自分が子どものころと変わらない防府の自然や、変わらず続いている御神幸祭を見て、なつかしさもひとしおだったのではないでしょうか。
山頭火のふるさとである防府市では、種田酒造場の破産や夜逃げ、乞食坊主、また酒癖の悪さなど悪いイメージが知られています。それでもなぜ山頭火が人気なのか。その理由を髙張さんに教えていただきました。
髙張(たかはり)優子(ゆうこ)さん
2017年山頭火ふるさと館開館当初から学芸員を務める
お茶の水女子大大学院
比較社会文化学専攻博士前期課程修了
■光の部分をも未来に伝える
-光と影が山頭火の魅力-
山頭火の悪いイメージはよく知られています。しかしそのようなイメージがあっても、山頭火が人気なのは、やはり俳句の力です。山頭火の俳句は難しい言葉を使わずに、口語的な言葉で詠まれており、誰にでも親しみやすい点が特徴です。好きな事をして自由に旅をした自由奔放な生き方も人気の理由ですが、実際は生涯を通じて多くの困難や挫折を味っています。山頭火の様々な感情や思いが込められた俳句は、私達の心が弱った時、寄り添い支えてくれます。山頭火は生涯を通して多くの俳句を残していますので、共感できる物が必ず見つかります。ぜひ多くの俳句に触れ、共感できる部分を見つけてください。
多くの苦労の中で生まれた光の部分である俳句の魅力を、特に影の部分を多く知る市民の方々には伝えていきたいと思っています。山頭火の俳句は短い言葉でも映像的であり、絵画的な想像力を駆り立てます。現に多くの画家や版画家が山頭火の俳句から作品を作っています。俳句を詠むと、皆さんも情景が浮かぶのではないでしょうか。
山頭火ふるさと館では、色々な視点から山頭火を感じることができる企画展を開催しています。現在開催中の企画展は、「現代によみがえる山頭火」と題し、漫画やゲーム、ラーメンにお酒と俳句からは離れた別の視点から山頭火を感じることができます。休憩スペースやショップもありますので、どうぞお気軽にお越しいただけたら幸せます。
