くらし 私たちと人権シリーズ『言葉の力』

田布施町立東田布施小学校 校長 平田 俊文

『みなさん。これからは、子どもたちのことを男女関係なく○○さんと、「さん」を付けて呼びませんか。きっと優しくなれますよ。』
これは私が教諭だった頃、ベテランの女性教員の方が、職員会議で呼び掛けられた言葉です。
私はそれまで恥ずかしながら、子どもたち、特に男子児童に『さん』を付けて呼んだことはありませんでした。呼び捨ての方が親近感が沸き、子どもたちとの距離が縮まるだろうという勝手な勘違い、また、自分は教員、相手は子どもという関係から、名前の呼び捨ては当たり前だと思い込んでいました。
さっそく次の日から、全職員が男子児童、女子児童関係なく『さん』を付けて呼び始めました。私は子どもたちに、『さん』を付けて呼ぶことは相手を大切にする呼び方であること、相手が子どもであっても一人の人間として尊重する呼び方であること、お互いの心が穏やかになることを伝えました。私自身、最初は照れがありましたが、子どもたちも、戸惑いを感じていました。しかし、続けていくうちにそれが当たり前になり、逆に呼び捨てをすることに抵抗を感じるようになりました。
間違いなく変わったことは、私自身、心が常に穏やかになったこと、さらには、子どもたち一人ひとりをそれまで以上に大切にするようになったことです。特に、子どもたちを指導する際には、『さん』を付けて子どもたちの名前を正しく呼ぶことで、冷静な自分でいられるようになりました。感情に任せて『怒る』のではなく、子どもたちの成長を促し、改善に繋げていく『叱る』ことが意識的にできるようになりました。また、子どもたち同士も『さん』を付けて名前を呼び合うことで、トラブルも減りました。
たった二文字の『さん』が私や子どもたちを変えました。言葉の力には改めて驚かされます。日常の言語環境はとても重要です。人権感覚を高める第一歩は、相手を尊重した呼び方をすることからだと考えます。学校全体で『さん』が飛び交う環境をつくっていきたいと強く思います。