くらし 【トーク企画】市長としゃべらんで Vol.21(2)

▽取材を支えた偶然とご縁
市長:吉野川市での思い出や印象をお聞かせください。
白羽:まず、吉野川市はとても広いという印象です。そして、地域を回る中で、人の温かさにも触れました。
板野町も含めて石垣のある家を探して車で走っていると、ある時、軽トラックが止まり「何か用ですか?」と声をかけてくださる方がいました。事情をお話しすると、「今はブロッコリーの収穫で忙しいんですよ」と笑いながら畑に戻っていかれる。そんな偶然の積み重ねが取材を前に進めてくれました。
山川町の古民家も、偶然の出会いと皆さまのご厚意で撮影が実現しました。農家の皆さんと接して感じたのは、暮らしの豊かさです。仕事場も生活も、すべてが画になる街だと思いました。市内の料理店に入ったとき、入り口近くのL字カウンターを見て「これは映画に使える」と思ったことも印象に残っています。
市長:私たちには当たり前の風景でも、監督の目を通すと映画のワンシーンになるのですね。市民の皆さんにとっても新鮮に映るはずです。

▽ベトナムでの熱い歓迎
市長:ベトナムの国際映画祭にご招待されたとのことですが、海外での反応はいかがでしたか。
白羽:海外での上映も印象的でした。ダナン・アジア映画祭(第3回)で上映した際、現地の方々にとても喜んでいただきました。
「日本とベトナムの架け橋になる映画だ。ぜひベトナムでも全国公開を」と言っていただき、質疑応答も大変盛り上がりました。翌日のクロージング※4では、主演の中江有里さんがプレゼンターとして登壇し、作品への評価を実感しました。
市長:海外でも吉野川市の魅力が伝わったと聞くと、とても誇らしい気持ちになりますね。

▽この街の日常を映画にのせて
市長:最後に、市民の皆さんへのメッセージをお願いいたします。
白羽:この映画では、吉野川市に移住してきた方、昔からこの土地で暮らしている方、そして外国の方、それぞれの〝本当の声〟を拾い、映像化したつもりです。市民の皆さんには、きっと身近に感じていただけるはずです。
また、この映画は大きな刺激や派手さがある作品ではありません。ゆっくりと生きること、自然に感謝すること、目に見えない豊かさを感じながら生きることの価値をお伝えしたいと思いました。何度見ていただいても味わいが増す映画になったと思います。どうぞ楽しんでください。
市長:見慣れた風景がたくさん出てきますので、吉野川市の方が見ると、きっと親しみを覚える映像だと思います。この街をぎゅっと凝縮した映画のように感じました。
白羽:「吉野川市の良いところ」を並べるだけではなく、映画ならではのテーマや空気感を感じていただけるように撮りました。日常に近い内容ですが、映画らしい映画になっていると思います。移住や関係人口に関心のある方にとっても、暮らしのイメージが伝わる作品になったのではないでしょうか。11月の公開に向けて、皆さんと一緒に盛り上げていければと思います。
市長:本日はありがとうございました。

▽用語説明
※1 プロットライター:映画やドラマの物語の骨格(プロット)を作る専門職
※2 サムネイル:動画の表紙となる小さな画像
※3 インスタ:Instagram(インスタグラム)の略。写真・動画共有SNS
※4 クロージング:映画祭の閉会式

■白羽弥仁(しらはみつひと)監督
▽白羽弥仁(しらはみつひと)監督のプロフィール
兵庫県芦屋市生まれ。日本大学藝術学部演劇学科演出コースを卒業後、映画やドラマの企画・脚本に携わる。1993年に劇場映画『She’s Rain』で監督デビュー。
以来、『能登の花ヨメ』『ママ、ごはんまだ?』『みとりし』『あしやのきゅうしょく』など、地域や家族の日常を温かく描く作品を多く手がけてきました。また、外国人女性の暮らしに迫ったノンフィクションの映画化作品『フィリピンパブ嬢の社会学』でも注目を集めました。
現在は映画制作と並行して、大手前大学で映像制作を教えるなど、次世代の育成にも取り組んでいます。最新作『道草キッチン』は、吉野川市と板野町を舞台に「ゆったりと生きる豊かさ」を描いた心温まる作品です。