- 発行日 :
- 自治体名 : 徳島県阿波市
- 広報紙名 : 広報あわ 2025年5月号
阿波町南整理さかまき整形外科 酒巻忠範(さかまきただのり)先生
数年前から、背骨の骨折で受診される高齢者が増えています。治療はコルセットによる固定と安静を続けていただきますが、骨量がかなり少ない場合は骨がくっつかないことがあり、1年以内に二次骨折(新たに他の骨折)を起こすリスクも高くなります。
65歳以上の約1万人を対象とした海外の調査によると、骨密度検査(腰・股関節で測定)で若年成人と比較して70%以下の場合は、その後に股関節が折れる割合は3人に1人、60%以下の場合は2人に1人とされ、寝たきりになる負の連鎖を断ち切るため、早い段階からの骨粗しょう症治療が推奨されています。
骨は常に吸収と形成を繰り返していますが、年をとると吸収が増えるため、これまで整形外科や内科では骨吸収を抑える薬が主に使われてきました。しかし骨量のかなり少ない高齢者では、形成そのものがとても少ないため、まずは骨形成を増やす注射薬を先に1年程度続けてから、吸収を抑える薬に切り替えることが推奨されるようになり、2024年米国骨代謝学会でも骨折リスクが高い骨粗しょう症の第一選択を骨形成注射としています。
効果は1年後に4〜6%の骨量が増え、結果として股関節骨折率が30〜40%減ることが期待できるため、当院でも毎月1〜2人に対し1年を目安に骨形成注射を始めています。またこれまで骨吸収を抑える薬を続けてきた人も、効果不十分な場合は変更が可能です。
骨形成注射は1割負担の人でも毎月約5000円と薬価が高いのが欠点ですが、吸収抑制薬のリスクである顎骨壊死の心配がほとんどなく、骨の代謝を活発化してくれる(骨が若返る)ため、骨量のかなり少ない差し迫った骨折リスクのある方には最も有効な治療法です。
このコーナーは阿波市医師会・阿波歯科医師会・板野歯科医師会のご好意により提供いただいた原稿を掲載しています。