くらし 海へといざなう透明感。(1)

■[知事対談]香川県知事 池田豊人×SANAA(妹島和世+西沢立衛)
世界的な建築家ユニットであるSANAAは、香川のことをどう思っているのだろう。
あなぶきアリーナ香川(香川県立アリーナ)の開館から1周年を迎えるこのタイミングで、設計者であるSANAAのお二人に、アリーナ設計時の思いや香川の魅力などを尋ねました。

◎プロフィール
妹島 和世(せじまかずよ)氏:1956年、茨城県生まれ。日本女子大学大学院を修了後、妹島和世建築設計事務所を設立。現在、ミラノ工科大学教授、ウィーン国立応用芸術大学教授、日本女子大学客員教授を務める。
西沢 立衛(にしざわりゅうえ)氏:1966年、東京都生まれ。横浜国立大学大学院を修了後、1997年に西沢立衛建築設計事務所を設立。現在、横浜国立大学大学院教授を務める。豊島美術館の設計者。
SANAA(Sejima and Nishizawa and Associates):あなぶきアリーナ香川を手掛けた妹島氏と西沢氏による建築家ユニット。1995年に設立し、これまでヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞(2004年)、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞(2010年)、王立英国建築家協会(RIBA)のロイヤル・ゴールド・メダル(2025年)など数多くの賞を受賞。あなぶきアリーナ香川は、2025年12月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が世界で優れた建築物などを表彰する「ベルサイユ賞」の「世界で最も美しいアリーナ2025」最優秀賞を受賞した。

◯瀬戸内海、山、街と一体にあるアリーナに。
知事:あなぶきアリーナ香川(香川県立アリーナ)の開館から1年が経ちました。本当におかげさまで大評判で。まず、外観のユニークさによる際立ったオンリーワンの力。それから、周辺環境との調和についての評価も高いです。また、コンサートやスポーツのイベントを開催しましたが「使い勝手が良い」と好評です。アリーナ設計時のコンセプトや着眼点を教えてください。
妹島:以前「海の駅なおしま」の設計に携わった際、高松と直島を往来するのに、今アリーナがある辺りを通っていました。その時から、瀬戸内海を含めた周囲の風景がすごく印象に残っていて、設計にあたっては、なるべく瀬戸内海それから島、周りの山、そういうものと一体になるようなアリーナを造りたいと考えました。
西沢:公園のような機能を中心に置きながらも、開館・閉館にかかわらず、来たらくつろげる場所。元々、アリーナの建設地周辺は、空き地のような場所でした。そこでは、バスケットボールなどいろいろなイベントが行われ、親子連れなど県民の皆さんがくつろぐ公園のような機能を持った場所として活用されているように見えました。だから「箱を作る」というイメージではなく、公園の延長線上にあるような感じで、内外に連続性のある「空き地に屋根がかかっただけ」という、そんなイメージで設計を始めました。

◯駅側から見た時の透明感
知事:駅方面からアリーナへと進み、メインアリーナとサブアリーナの間辺りで、緩やかな坂を上っていくと、海が「バン」と開ける。その時の「おおっ」となる景色、すごく評判がいいです。そこで写真を撮ると、ちょうど景色が枠に入ったようになるんですよね。
妹島:アリーナができたことで海と街が分断されるのは避けたかったので、メインエントランスから通り抜けられるように設計しました。大きな施設だからこそ、使っていない時でも気軽に近づけるものにしたかったんです。
西沢:駅の方から見ると透明感があって、その向こうに海があるのも何となく分かるし、海へ自然にいざなわれる。メインアリーナとサブアリーナがつながってしまうと、そこが暗くなってしまうので、それらが離れた方が、人が自然に集まってくるのではと考えました。
知事:私も、アリーナの建設当時から「ここに日常的に人の流れが出来てほしい」と、本当にそればかりを考えていました。それから、アリーナの周囲は軒下を歩けるようになっていますよね。
西沢:ドーム状の建物は普通、屋根が着地するものなんです。だけど着地すると何か閉じてしまう感じがするので、屋根を持ち上げる。そうすると軒が出て、そこを歩けるようになる。それがこのアリーナが持つ解放感の象徴でもあります。