しごと 【特集】地元(ここ)で叶える(1)

就職活動は未来への大きな一歩を踏み出す重要な分岐点。
今回取材した3人の先輩たちは、地元だから「戻りたい」「役に立ちたい」「よくしたい」という思いをそれぞれの形で叶えていました。正解がないからこそ不安でいっぱいの方も多いですが、先輩たちのリアルな声があなたの思いを叶えるヒントになるかもしれません。

■伊藤瑠美(るみ)さん
特別養護老人ホームル・ソレイユ
[1日のスケジュール]
(早出の場合)
7:00 起床、朝食、入浴介助
11:30 昼食介助
13:30 レクリエーション
15:00 おやつ準備、介助
16:00 退社

▽寄り添うケアで福祉の未来を照らす
丹原町のル・ソレイユで介護のリーダーを務める伊藤瑠美さんは、「福祉分野で人の役に立つ仕事がしたい」という強い思いを持っていました。
専門学校時代に施設見学をした際、職場の明るい雰囲気と、一人一人の気持ちに寄り添うケアに引かれました。「西条で就職したくて、いろんな施設を見学しましたが、その中でもここはスタッフと利用者様の関係が深いなと。例えば、みんなが同じものを飲むのではなく、利用者様に『何が飲みたいか』尋ねる。それぞれの要望にきめ細かく配慮する姿がすごくいいなと思いました」。
現在は利用者の日常生活の支援やスタッフのマネジメント業務に携わります。「その方らしく穏やかに生活できるよう、スタッフ間で安心できる声掛けを共有して、利用者様にいい変化が見られると、本当にやりがいを感じられます」。最近ではスタッフ教育にも力を入れているという伊藤さん。「高齢化が進む中、福祉の仕事はますます重要になるので、もっと若い人たちが働きやすい職場にしたいです」。特に心掛けていることは、誰に対しても「プラスの声掛け」をすること。「ちょっとしたことですが、いいところを言葉にして伝えて、まずはスタッフ同士で明るく相談しやすい雰囲気を作れるよう意識しています」。
5年前から、スタッフの身体的な負担を減らすため、ノーリフティングケア(福祉用具を活用し身体的な負担なく安全に介助を行うケア)を導入。伊藤さんを中心としたスタッフからの提案で実現しました。「福祉の仕事に情熱があっても、身体的な負担が理由で退職していった先輩たちを見てきました。そんな理由で仕事を諦めてほしくない」。自分たちがやりたいケアを継続しながら、体の負担も減らすという形を実現しました。
熱い思いで「働きやすい」環境づくりに力を入れる伊藤さん。「福祉のことをもっと広めたい。福祉業界で働くことに対する不安をなくし、やりがいを実感できるよう今後も働き続けていきたいです」と語るその姿は、福祉の未来を明るく照らしているようでした。

■越智伊吹(いぶき)さん
フジボウ愛媛株式会社
壬生川工場
[1日のスケジュール]
8:00 朝礼、作業準備
9:30 作業開始
12:00 昼休み
12:50 作業再開
14:30 ミーティング
16:30 退社

▽原点で生きる。ここにしかない魅力
「ずっと地元に戻ってきたいという気持ちがありました」と話すのは製造部に所属する越智伊吹さん。「小学校からずっと野球をしていて、高校進学の時に市外へ出たので、友達とあまり遊べなかったり、大好きな祭りに参加できなかったりして寂しさを感じていました。だからこそ就職は『絶対西条で』と決めていました」。1度離れたからこそ、それまでは当たり前だった地元の魅力を改めて実感できたそうです。
高校時代は副キャプテンとしてチームを引っ張ってきた越智さん。業務は研磨材製造のラミネート工程を担当します。「入社時に業務内容の説明は受けていたものの、やっぱり初めて見る機械で作業をするのは大変でした」。そんな時に生きてくるのが、野球部の仲間と日々練習に取り組む中で培われた「物事に誠実に向き合う姿勢」と「協調性」。「機械は1人で動かせない。チームプレーでその日の業務をミスなく丁寧にやり遂げたときにやりがいを感じます」。
会社では、勤務時間内に必要な資格が取得できるようスケジュールを管理。入社時に専門的な知識や技術がなくても、ゼロから学び、安心して働ける環境が整備されています。「入社後にフォークリフトの免許を取得しました。今は機長という機械を動かすうえでのリーダー的役割を目指して勉強中。ゆっくりでも完璧にできるようにしたいです」と前向きな姿勢を見せてくれます。
これから就職活動をスタートするする人たちへのアドバイスを聞くと、「社会経験がないとなかなか働くイメージができないので、自分だけで企業を探すのは難しいです。僕は経験豊富な親世代の人たちに西条市の企業についていろいろ聞いて、今の会社を選びました。一人で悩まず、周りの人を頼りながら、自分に合った企業を探すといいと思います」と笑顔で答えてくれた越智さん。自分の道を模索する中で親世代の経験や価値観が新たな選択肢を与えてくれるかもしれませんよ。