- 発行日 :
- 自治体名 : 愛媛県上島町
- 広報紙名 : 広報かみじま 2025年12月号
■機械油乳剤による果樹類の害虫防除
機械油乳剤(マシン油乳剤)は、果樹類や庭木類のカイガラムシやハダニの越冬虫の防除として昔から使われてきました。本剤は、油膜で害虫類を窒息させて殺虫する作用から主に収穫後の冬季(休眠期)に散布することが推奨されています。今回は、機械油乳剤の効果的な使い方と使用上の注意について解説します。
(1)機械油乳剤の特徴
機械油乳剤には、油分が95%の製品を精製マシン、97~98%の製品を高度精製マシンと呼ばれ、機械油乳剤95、トモノール、アタックオイル、ハーベストオイルなど製剤メーカーにより商品名が異なります。機械油乳剤は、昆虫の気門という呼吸器官を油膜で塞いで殺虫効果を発揮することから散布むらが無いよう丁寧に散布することが重要です。
(2)機械油乳剤によるかんきつ防除
機械油乳剤は12月~3月(厳寒期除く)と6月(夏季)に散布ができますが、薬害発生の観点から散布時期が限定され、春から夏の防除にはアタックオイルなどの高度精製マシンの散布を推奨しています。散布時期や対象害虫により倍数が異なるので注意してください(表1参照)。

機械油乳剤は物理的な働きにより殺虫するため、一般の化学合成農薬のように神経毒の殺虫剤に比べ薬剤抵抗性が発達しないので安定した殺虫効果が期待できます。ミカンハダニ(写真1)やカイガラムシ類の越冬虫と夏期のミカンハダニの発生始期(6月)に機械油乳剤を適期に散布することでかんきつ害虫の発生を低く抑えられると考えます。
※詳細は本紙をご覧ください。
(3)機械油乳剤の使用上の注意
油分で葉や枝の表面を被覆するため、樹体への影響が見られます。散布後の葉には油浸が見られ、しばらくすると消失しますが、樹体への負担があるので冬季(12月~3月)の2回散布は絶対に行わないようにしてください。また、樹勢が極端に低下した樹への冬期散布は落葉を助長するので散布は控えてください。冬季散布は散布直後に寒波を受けると落葉などの影響が大きくなるので1月中旬~2月中旬頃の厳寒期の散布は控えてください。散布は、油分の伸びがよくなるので天気のよい暖かい日に散布してください。最近は越冬品種(2月~3月収穫)やレモンの実を春まで成らせる場合がありますが、果実がなっている場合、使用基準では散布前日数の制限はありませんが、成分が機械油ということから収穫後に散布してください。3月までに機械油乳剤が散布できなかった場合は、発芽後の4月中旬~下旬に高度精製マシンの150倍を散布することでミカンハダニの冬季防除と同水準の効果が期待できます。また、カイガラムシの発生園では同時期散布の機械油乳剤にアプロード水和剤を混用するとカイガラムシの防除が可能となります。
(4)さいごに
機械油乳剤は薬剤抵抗性が発達しないという利点と虫体に確実にかかれば効果が安定していることからミカンハダニやカイガラムシの防除剤として上手に使用していただきたい農薬です。最近、かんきつ品種が多様化して冬季の散布時期が難しくなっていますが、害虫防除の基本薬剤として越冬虫や越冬卵の防除に有効に活用していただきたいと思います。
