くらし 手と手をつないで No.394

山本(やまもと)信哉(しんや)
(元小学校教諭)

■心のものさし(5)〜手と手をつなぐ〜
「うすだいだい」(または、「ペールオレンジ」)という色をご存じですか?
この色は昔「はだ色」という名前で絵の具やクレパスの中に入っていました。しかし、「はだ」の色は一つではない、多様な肌の色を考えた時、「はだ色」という名前はふさわしくないと「うすだいだい」という名前へと変えられました。私は、図画工作の時間、子どもたちに、人を塗る時「はだ色」を使って塗るよう教えていました。子どもたちに決めつけた見方を教えてしまったと後悔しています。

また、あるテレビドラマで辞書の編纂(へんさん)にあたって、「恋愛」という言葉の意味をどう解釈するか論議するシーンがありました。私は、辞書で「恋愛」という言葉を実際に調べてみました。すると、

れんあい【恋愛】特定の異性に対して他のすべてを犠牲にしても悔いないと思い込むような愛情をいだき・・・(後略)
〔新明解国語辞典:三省堂 第7版〕

と解釈されています。いかがですか?この言葉の解釈に違和感はありませんか。
実はこの辞書、近年改訂され、以下のように変更されています。

れんあい【恋愛】特定の相手に対して他のすべてを犠牲にしても悔いないと思い込むような愛情をいだき・・・(後略)
〔新明解国語辞典:三省堂 第8版〕

恋愛は男女間のものとは限らないという社会の認識の広がりから、「特定の異性」は「特定の相手」へと変えられたのです。

誰もが生きづらさを感じない社会、多様であることがあたり前の社会になっているのかという視点。その視点からの小さな気づきは、やがて声となり、人の「心のものさし」を変える力になるのだと思います。私たちの「あたり前」は時として人を苦しめることがあります。それは、「あたり前」でない人・物事をいつの間にか批判したり排除したりしてしまっていることがあるからかもしれません。
マザー・テレサは「愛の反対は無関心」と言いました。違いを排除するのではなく、近づく努力をして同じ風景を見る一瞬を積み重ねていきたい、そして手と手をつなぎたいものですね。