くらし 〔特集〕詐欺から身を守る(1)

多発する詐欺その手口とは…

◆巧妙化・悪質化する詐欺 県内過去最多の被害件数・被害額
福岡県内での詐欺被害が深刻化し、件数・被害額ともに過去最悪の水準となっています。高齢者を狙うニセ電話詐欺に加え、近年はSNS型投資・ロマンス詐欺などで若年層にも被害が拡大。巧妙化する手口の実態について迫ります。

◇詐欺被害の実態
「詐欺被害の件数・被害額は過去最悪の数値になっています」。
そう話すのは、直方警察署地域課宮若警部交番に勤める稲田由葵乃さん。多発する詐欺について現状と手口を伺いました。
「福岡県内の統計データによると、ニセ電話詐欺の令和7年の被害割合は、六十代から八十代までの高齢者が半数以上を占めており、特に女性の被害が半数以上という結果が出ています。
一方で、SNS型投資・ロマンス詐欺などのネットを通じた詐欺では男性の被害が半数以上を占め、年代別で見ると四十代から六十代までで全体の七割近くの被害が発生しています。SNSやインターネット上でのやり取りが中心になるため、このような傾向が見られると考えられます。
直方警察署管内でもさまざまな被害が発生しており、投資目的の詐欺、息子を名乗るオレオレ詐欺が連続して発生したほか、還付金詐欺でATMから数百万円を引き出させる手口も確認されています。
特に大きな被害としては、警察官をかたるオレオレ詐欺で、9月に数千万円をだまし取られる事件が発生しています。特定の手口だけが増えているというよりも、全体的にさまざまな手口が増加している状況です。
また、近年は新しい手口も見られますが、実際には過去の手口が形を変えて繰り返されている傾向があります。令和6年はオレオレ詐欺が三件程度だったのに対し、令和7年は十八件と大幅に増加しました。警察がSNS型投資詐欺やロマンス詐欺への注意喚起を強めた影響で、犯人側が従来型の手口に戻った可能性も指摘されていますね。犯人は過去の手口を改良しながら、どの方法が効果的かを試している状況です」。

◇手口の巧妙化
「警察では、被害者になりかけている人などに、詐欺電話を受けた際に協力を依頼し、犯人の指示どおりにだまされたふりをしてもらう『だまされたふり作戦』を行っています。現金やキャッシュカードを受け取りに来た犯人を現場で待ち構え、逮捕するというものですが、この方法そのものを悪用する詐欺も発生しています。「警察が近くで待機している」と言って現金を置かせ、そのまま持ち去る手口です。警察の活動自体を逆手に取るケースも出てきているのです。
また、警察署の電話番号末尾『0110』を偽装表示するケースや、LINEに誘導して警察・検察・厚生労働局などを次々に名乗るケースもあります。逮捕状の画像をLINEで送るなど、本来あり得ない手法も確認されています。
犯人の特徴は、『焦らせる』『不安にさせる』ことです。『逮捕される』『会社をクビになる』『今すぐ振り込まないといけない』と心理的に追い込み、冷静な判断を奪います。投資詐欺では、最初に少額の利益を出して信用させ、さらなる金銭を要求する手口が使われます。ロマンス詐欺では恋愛感情を利用し、『日本へ行く費用が必要』などと送金させる手口もありますね。
犯人たちはあの手この手で、手口を組み合わせ進化し続けています」。

・稲田 由葵乃さん Yukino Inada
巡査部長 直方警察署地域課 宮若警部交番
平成25年4月に福岡県警察官拝命。直方警察署地域課宮若警部交番に勤務。お酒を飲むのが大好き。2児の母で日々子育てにも奮闘中。

◇令和7年の被害件数・被害額
〔福岡県内の被害件数・被害額〕
・ニセ電話詐欺を含む特殊詐欺
件数…1,239件
被害額…約54.9億円

・SNS型投資・ロマンス詐欺
件数…761件
被害額…約80.2億円

〔直方警察署管内の被害件数・被害額〕
・ニセ電話詐欺を含む特殊詐欺
件数…27件
被害額…約1.3億円

・SNS型投資・ロマンス詐欺
件数…16件
被害額…約1.4億円

◇ニセ電話詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺の分析
〔分析(1)〕ニセ電話詐欺(特殊詐欺)の被害者の性別割合(令和7年)

男性40%、女性60%となっており、女性の被害が多い状況です。しかし、性別を問わず被害は発生しており、誰もが狙われる可能性があります。電話でお金の話が出た場合は、いったん電話を切って家族や警察へ相談することが重要です。

〔分析(2)〕ニセ電話詐欺(特殊詐欺)の被害者の年代別割合(令和7年)

60代12%、70代15%、80代27%となっており、60代以上で半数以上を占めています。高齢者を狙い、親族や公的機関を名乗って不安をあおり、現金やキャッシュカードをだまし取る手口が多く見られます。

〔分析(3)〕SNS型投資・ロマンス詐欺の被害者の性別割合(令和7年)

被害者性別割合は男性60%、女性40%となっています。SNS型投資は「必ずもうかる」などと勧誘し金銭をだまし取る手口、ロマンス詐欺は恋愛感情を利用して送金を求める手口です。性別を問わず被害が広がっています。

〔分析(4)〕SNS型投資・ロマンス詐欺の被害者の年代別割合(令和7年)

SNS型投資・ロマンス詐欺の被害は、40代・50代が中心を占め、60代も21%と高い割合となっています。特に、資産形成や老後資金への関心につけ込む投資話や、恋愛感情を利用する手口が目立ちます。