しごと 【特集】~伝統の継承と発展(2)~久留米絣の「これまで」と「これから」(3)

▼野村雅範絣工場 4代目 野村雅範さん
○トライアンドエラーで積んだ経験
私が仕事を始めたころは、手取り足取り教えてもらえる時代ではなく、失敗しながら少しずつ自分で覚えていくしかありませんでした。私が30歳になる前、先代である父が他界したときが一番大変だったのを覚えています。特に機械の扱いに苦労し、分からないことは産地の先輩に聞いて回り、手探りで織機の調子を覚えていきました。ひたすら「やってみて、失敗して、学んで」を繰り返し、コツコツと経験値を積んでいきました。今では、毎朝織機の調子を見ることから、私の一日が始まります。

○焦らず地道にやっていくことが大事
作り手として、やはり頑張って作ったものをお客さんが喜んで買って帰ってくれるのが何よりうれしいです。そのためにも、何事も焦らず地道にやっていくことが一番大事だと思います。

▼丸亀絣織物 5代目 丸山重俊さん
○一人でも多くの人に魅力を知ってもらいたい
久留米絣の価値を多くの人に知ってもらいたいという思いから、自宅の蔵を活用し、今年の3月に販売と久留米絣を体験できる店舗をオープンしました。自社では化学染料による染色を行っているのですが、化学染料での染めは体験しにくいため、天然染色の実験を始めました。そのほか、屋久杉や八女茶で染めた糸を織り上げて、その風合いや活かし方の検証などもしています。

○若い世代の人が憧れる職業に
作り手がいないと伝統工芸品はつくれません。そのためにも、従業員が一緒に楽しんで働ける環境づくりに取り組んでいます。最近、自身のデザインが凝り固まってきていると感じる事があります。若い世代の感性は物づくりの際にとても重要で、指摘してくれる人は大歓迎です。世代の垣根を越え、多くの人とつながりたいと思います。

▼山村かすり工房 4代目 山村善昭さん
○技の伝承に業界全体で取り組みたい
久留米市城島町の出身で、28歳のときの結婚で広川町に移住し、義父から久留米絣を学びました。藍染(あいぞめ)グラデーションと経緯絣(たてよこがすり)が山村かすり工房の特長であり、経緯絣の技の伝承は、とても重要なことであると考えています。後継者を育てることは業界全体で取り組む必要があり、各織元の得意な分野を産地内の養成所で一通り学び、一人前になった若手が各織元に就職する。そのような仕組みづくりができれば、後継者不足の解消につながるのではないでしょうか。

○訪れてもらえる広川町にするためには
広川町は、観光資源や特産品がたくさんあるのに生かしきれていないように感じます。業種にとらわれず、広川町のみんなで盛り上げていくことが大切であり、若い人が生活する未来の広川町がより良いものになるよう考え続けています。

▼(有)久留米絣山藍 4代目 山村省二さん
○灰汁発酵建てへのこだわり
山藍の久留米絣の特長は、合成物は使わず、天然素材のみで藍を建てる藍染めや草木染めでの染色にあります。見極めや管理は非常に難しいですが、天然藍で染める魅力は「タデ藍」という、植物のさまざまな要素が溶け込んでいるところにあります。見る角度で藍の色味が違って見え、深い色合いの中に透明感があるのです。藍を通じて、他産地との交流も積極的に行っています。

○外から来た人の刺激
外から飛び込んできた人間は、最初から環境がそろっている人間とは気構えが違います。そんな人たちが広川町で頑張っていると「こちらも頑張らないと」とよい循環が生まれます。地元の人だけでは、考え方が限られてしまう。後継者問題を考えるとき、全国から若い人に来てもらえるよう「久留米絣を学べる学校」があれば良いと思います。

▼(有)坂田織物 3代目 坂田和生さん
○楽しいことをやらないと続かない
坂田織物では、カフェの併設やレジデンスの長期受け入れ、工場見学などの取り組みをしていますが、そのキーワードは、すべて「楽しい」ことにあります。産業継承の使命感はとても大事なことだと思いますが、長く続けるためにも、100パーセントの力で走り続けるのは難しいことです。今やっている仕事を次世代に引き継ぎ、絣を残していきたいからこそ、楽しい経験として伝える必要があると考えています。

○みんなちがって、みんないい
緻密(ちみつ)な図案に沿って、職人が忠実に括(くく)っていく絣ですが、どれだけ丁寧な作業を経ても、何故か柄のズレやかすれが生じます。でも、みんな同じじゃないところが面白い。個性的で全然OKなんです。そんなところが海外でも評価されているのではないでしょうか。

■そのほか、広川町の絣商品取り扱い店
○(株)国武織物
住所:広川町大字久泉472-1

○楚々-soso-(有)オオヤブ
住所:広川町大字広川231

○ひろかわ藍彩市場
住所:広川町大字日吉1164-6

■第33回広川かすり祭を開催します!
産地だから出会えるものがある。
「絣デザインコンテスト」や「かすりんピック」など、たくさんのイベントを用意しています。
親子でぜひご参加ください。
日時:9月20日(土)・21日(日)、9:00~16:00(悪天候の場合は9月27日(土)・28日(日)に延期)
場所:広川町産業展示会館
主催:広川かすり祭実行委員会(広川町観光協会)

問合せ:
ひろかわ藍彩市場[(火)定休日]【電話】0943-32-5555
広川町商工会[(土)(日)(祝)定休日]【電話】0943-32-0344

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問合せ:産業課商工観光係
【電話】0943-32-1841