- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県広川町
- 広報紙名 : 広報ひろかわ (令和7年9月1日号)
■~それぞれの織り手が絣にかける想い~久留米絣を染め織るひとびと
広川町の久留米絣産業に携わる人に、仕事にかける思いなどをインタビューしました。
▼藍染絣工房 4代目 山村健さん
○憧れの人から教わったこと
私が20歳のころは生産量が伸びている時代であり、藍染(あいぞ)めは濃紺が基本で、人造藍を補充して短時間で濃く染めていました。そのため、色落ちしやすく、着ると青くなることが当たり前でした。そのような中、人間国宝である松枝玉記さんの淡い藍の色に憧れ、藍染めの基本を教わりました。その教えをベースに、色落ちしない藍染の研究を続けていきました。
○良いものは安く売らない理由
時代と共に問屋を通じての販売が困難になり、約30年前から自販へ舵をきりました。しかし、最初は価格面での折り合いがつかず、久留米絣の技術と単価について丁寧に説明していきました。正当な利益がないと、安く上がる手法でしか物をつくらなくなってしまいます。今では理解してもらい、取り引きが続く関係になりました。
▼藍森山 森山絣工房 6代目 森山浩一・典信さん
○二人が大切にしていること
広川町で育ち、それぞれのフィールドで社会人となり、二人で工房を継ぐことを決めたのは、今から4年前のことです。違う畑で経験値を積んできたからこそ、お互いの得意分野をかけ合わせ、今の環境をつくり上げてきました。そんな私たちが大切にしていることは、「人とのつながり」です。人とのつながりは、多くのチャレンジを可能にし、困難を乗り越える支えになります。
○久留米絣をもっと身近に
地域の人、そして世界中の人が来てくれる場所にするために、絣をもっと身近に感じてもらえるような取り組みを積極的にしていきたいと考えています。工芸はもっと身近なものであるべきです。違う業界の人たちと組み、新しい久留米絣の道も模索していきます。
▼かすり工房「藍の詩」冨久織物 4代目 冨久洋さん
○大切なのは顧客の要望に応えられるかどうか
小学2年生のときにバイクのデザインに興味を持ち、工業デザイナーを目指し勉強しました。そのときの知識や経験が、今に生きていると感じます。冨久織物の久留米絣は「特長がないのが特長」で、機械織り・手織り・藍染め・化学染色をすべて行っています。注文をもらってつくる以上、お客さまが満足できるかどうかが大事。主観を捨て、どこまで相手の要望に応えられるかが重要であると考えています。
○絣産業を未来へつなぐために
産地が成長する上で、誰一人置き去りになってはいけない。今までこの産業が続いてこれたのは、それぞれの立場で役割を分担し、協力し合ってきたからこそであると考えています。時代や状況が変わっても、感謝や思いやりを大切に、そして産業を未来へ繋ぐためにも絣を織り続けます。
▼久留米絣広川町協同組合 園木新一郎さん
○作り手の喜び
私が久留米絣業界の門をたたいた19年前は、まだ試作機だった緯糸(よこいと)の括り機に専門の職人がついておらず、一部の関係者が必要な時に動かしていました。織元さんや経括(たてくく)りの職人さんから話を聞き、技術を磨きました。柄のデザインをすることもあるのですが、自ら括った糸が織られていく様子を目にできるのがうれしい。そのほか、その反物で着物を仕立てようか迷っている人に出会ったり、絣ファンの女性から声を掛けられたり、お客さまの声はうれしいです。
○女性も活躍できる仕事に
子どもたちの手織り体験で柄が現れたら楽しいだろうなと、自宅で少しずつデザインや実験をしています。力仕事だった括り作業も、機械化で女性もできる仕事になりました。今年も、経括りの現場に20代の女性が加わり、今後が楽しみです。
▼野口織物 3代目 野口泰光さん
○代名詞「チヂミ織」
黒木町の出身で、サラリーマン時代を経てから27歳のときに野口織物に入りました。何の知識もない、真っ新な状態でのスタート。義父さんは手取り足取り教えてくれるわけではなく、見て自分でやって失敗して覚えていきました。「チヂミ織」は、20年ほど前に問屋さんからのリクエストで始めた手法で、今では野口織物の代名詞になりました。生地の厚みの調整など、試行錯誤の末、現在の肌触りにたどり着きました。
○商売としてのものづくりへの考え方
商売でやっている以上、ものづくりへの考え方はシビアです。いいものができたときに「あぁ良かった」とは思うけど、売れなければ意味がない。反響の薄い柄はなるべくつくらないことが基本で、売れた柄の図案を軸に、色バリエーションややり方を変えて表現していく事が多いです。
▼野村織物(有) 4代目 野村周太郎さん
○王道の糸づかいと豊富な色表現
野村織物の特徴は、何といっても「色の豊富さ」です。あえて昔からの糸づかいにこだわり、色柄での表現を続けています。年間に50~70もの新柄を生産できるのは、自社で染色を行っているからであり、お客さまの要望に応えられるスピード感を大切にしています。新たな取り組みとして、昨年からチェック柄や文人柄の生産もしています。
○外から人が来るような町へ
広川町は住みやすい町ですが、遊べる場所がないため、休日は町外に出てしまうことがほとんどです。飲食店があり、子どもが遊べる場所がある。そのような、一日を完結できる町づくりができれば、外からも人が来るようになります。かすり祭りなど、事業者が一堂に会するイベントは、町をPRする機会にもなるため、そういった場で、広川町の知名度アップに貢献していきたいと思います。
問合せ:産業課商工観光係
【電話】0943-32-1841