健康 診療所だより

◆いろいろながん検診について
我が国においては、約3人に1人ががんで亡くなっています。がんで死なないためにはがんを早期発見するしかありません。そのためには症状がなくても定期的にがん検診を受けることをおすすめしています。
さて、どんながん検診を受けるべきでしょうか。下記の(1)~(5)が一般的ながん検診です。
(1)胃がん検診
胃がんの早期発見には約2年毎の、胃内視鏡検査をおすすめします。現在の内視鏡機器の性能は非常に良くなっています。より細くなり、かつ画像は鮮明になっています。また内視鏡検査の良い点は、何らかの病変があれば、その場で病変から一部組織を採取します。そして病理検査を経て、がんかどうかは数日以内に結果が出てくることです。
(2)大腸がん検診
大腸がんは比較的進行が遅いので、2~3年毎の大腸内視鏡検査をおすすめします。ポリープは多く発見されます。大腸ポリープは将来がんになる可能性があるので(胃のポリープは一般的にはがんにならない)、その場で切除してもらいましょう。
(3)肺がん検診
肺がんは日本人のがんによる死亡数がトップです。進行が速いので早期で見つかることは意外と少ないです。一般の単純X線検査では小さな影は発見しにくいので、ヘビースモーカーなど肺がんリスクの高い人はCT検査をおすすめします。CTではごく小さな病変でも明確に発見されやすいです。
(4)腹部エコー検査
超音波を用いる検査は苦痛やX線被爆なしで、腹部を広い範囲で診ることができます。肝臓、腎臓、胆のうなどの検査に向いています。弱点は肥った人はやや見えにくいし、膵臓は全体像を描出できにくい臓器です。エコー検査はなるべくエコー専門技師がいる病院で検査を受けた方がいいでしょう。
(5)乳がん検診
乳腺エコー検査とマンモグラフィー検査(X線検査)があります。閉経前の人はエコー検査、閉経後はマンモグラフィーがおすすめです。
上記の(3)~(5)はすべて画像検査です。画像検査では怪しい影があるということは発見されても、その影ががんかどうかまでは分からないので、続いてさらなる検査が必要となります。次は特殊ながん検診です。
(6)血液でがん検診(腫瘍マーカーによる検査)
各種のがん細胞は特殊なタンパクを作っています。そのような物質が血液中に存在しています。これらを腫瘍マーカーといいます。PSA(前立腺特異抗原)は前立腺がんのマーカーとしてよく知られています。PSA以外にも多数の腫瘍マーカーが存在します。例えば、CEA(がん胎児性抗原)は主に消化管(胃と腸)のがんの場合に数値が上がりますが、問題は胃腸以外の肝臓がんや乳がんなどでも高めに出ることがあるし、加齢、喫煙、妊娠などでも高めに出ることがあるので、がん検診には不向きです。その他の腫瘍マーカーも同じようなものです。しかしPSAだけは前立腺がん、前立腺炎、前立腺肥大症など前立腺だけの病気で高くなります。そのためPSAは前立腺がんの検診によく使われています。
(7)尿でがん検診(商品名:N-Nose)
ある線虫(ギョウ虫みたいな虫)は優れた臭覚を持っていて、がん患者の尿に集まる性質があるらしく、少量の尿だけで、がんのリスクを判定できるといいます。ただし、この検査で“がんの疑い”と判定されたとしても、どの臓器にがんが存在しているかまでは分からないので、それからは医療機関を受診して、いろいろな検査を受けることになります。
(8)唾液でがん検診(商品名:サリバチェッカー)
がん患者の唾液の中にはがん細胞が作っている物質が存在しているという。唾液を指定された検査機関に送付すると、口腔、肺、胃、大腸、膵臓、乳腺のがんのリスクを判定してくれます。この検査では“肺がんのリスクあり”というように病変の部位も指摘してくれます。

上記の(7)と(8)の商品は通信販売されています。尿や唾液でがん検診ができるなら夢みたいですが、これらの検査の有効性については、まだしっかりとした科学的な裏付けがないようです。一般の医療機関では行われていないがん検診です。興味がある人はネットで検索してみてはいかがでしょうか。

国民健康保険脊振診療所 牛島 幸雄

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