くらし きらり輝く神埼人 Vol.3

神埼のまちで、きらりと輝く活躍をされている方達を紹介します。

◆菱を神埼の特産品に
—学生と挑む開発プロジェクト

西九州大学 産学官連携推進室長 健康栄養学部 健康栄養学科
安田 みどり教授

クリークに自生し、神埼市では栽培もされている「菱(ヒシ)」。かつては身近な食材として親しまれていました。そんな菱を、再び地域の特産品として活かそうと商品開発に取り組んでいるのが、西九州大学 健康栄養学科の安田みどり教授と学生たちによるヒシプロジェクトチームです。
2009年に、菱の実を使った『菱焼酎』が商品化されました。その製造過程で大量に出る、菱の外皮に着目した安田教授。研究の結果、緑茶に匹敵するほどのポリフェノールが含まれ、血糖値や血圧の上昇を抑える効果があることが分かりました。「これほど栄養価の高い食品が捨てられているのは、もったいないと思いました」と振り返ります。
そこで、菱の外皮を使ったお菓子の開発をスタート。「試作は失敗の連続で、チョコに混ぜたら苦くなったり、研究室を油まみれにしたこともありました」と安田教授は笑顔で思い返します。学生たちと試行錯誤を重ね、佐賀の銘菓・丸ぼうろをヒントに、3年をかけて地元の菓子店と協力しながら『ひしぼうろ』を完成させました。
現在は、菱焼酎の製造終了により、使い道が減った菱の実の新たな活用に挑戦中です。「神埼市内でも菱を知っている人は少ないのが現状です。しかし、台湾では菱のコース料理を出すレストランもあるほどで、食品としてのポテンシャルは非常に高いと思います。付加価値をつけ、〝菱の町 神埼〟を目指したいです」と安田教授。随時開発した商品をイベントで販売しながら、地域の人たちに菱の魅力を伝えています。
安田教授と学生たちの挑戦は、人と自然、学びと地域をつなぐ試みです。クリークの水面に揺れる菱のように、この活動もまた、地域に根を張り小さな実を結び続けています。