- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県雲仙市
- 広報紙名 : 広報うんぜん 令和8年1月号
我が家の一年は、祖父の号令で始まる初詣から動き出す。お正月になると初詣のことしか頭にない祖父に連れられ、物心ついた頃には毎年の恒例行事になっていた。きっと私は赤ん坊の頃から、祖父の腕に抱かれて参道を歩いていたのだろう。
大はしゃぎで神社の鈴をたくさん鳴らしたあの頃の僕。小さな干支の置物を毎年一つ買ってくれた祖父。棚に並ぶ置物が一つずつ増えていくのを見るのが嬉しかった。けれど、中学生になった頃からか、その列は増えなくなっていた。毎年祖父と一緒に初詣に行っているはずなのに。
おみくじで大吉を引けば孫以上に喜ぶ祖父。恥ずかしいと言ってもしつこく写真を撮り続ける祖父。「今年は何をお願いしたとね?」と毎年聞かれるのもお決まりの会話。そして祖父は、他の家族が来なくても気にしないのに、私が行けない日だけは絶対に初詣へ行こうとしない。祖父にとっての初詣は、家族行事というより、私との行事なのかもしれない。
大人になるにつれて、初詣は年に一度の楽しみから、スケジュールの隙間にねじ込む行事へと変わっていった。そんな初詣も昨年は忙しさに追われ、初めて行けなかった。「もう少し暖かくなってから絶対行こうね」と言うと、祖父は「うん、分かった。楽しみにしとく」と嬉しそうに笑った。それなのに、気がつけばもう丸一年。それが今も心残り。
今年は行けるのだろうか。いや、絶対に行く!あの頃の僕のように。(龍)
