- 発行日 :
- 自治体名 : 熊本県人吉市
- 広報紙名 : 広報ひとよし 2025年9月号 No.1193
■岡 正文さん(下原田町)
おか まさふみ
1956年7月生まれ。趣味は子どもの頃から続けている鳩レース。愛鳩家(あいきゅうか)たちが飼育している鳩を、同じ場所から同時に放し、誰の鳩が一番早く帰ってくるかを競う。これまでに千キロメートルの距離を帰還させた経験も。現在は、約150羽の鳩を飼育している。
◇九州でただ一人伝統的なのこぎりづくりを引き継ぐのこぎり鍛冶師
カンカンッ」。鋼板を鉄のつちでたたく音が響く、鍛冶工房「岡秀(おかひで)」(下原田町)。岡さんは「手曲がりのこぎり」などを手作業で仕上げる伝統的なのこぎりづくりの技を継ぐ全国でも数少ない鍛冶師だ。
のこぎり鍛冶の世界に足を踏み入れたのは、高校を卒業してすぐのこと。父の秀雄さんに兄と弟子入り。父からは言葉ではなく「見て真似る」ことで技術を習得した。修行に励んでいたところ、兄が急逝したため、必然的に2代目を継ぐことに。それからは試行錯誤を繰り返し、寝る間も惜しみながら常に技術を磨き続けた。
岡さんが生み出すのこぎりは、良質な安来鋼(やすきはがね)を使用。鋼板を熱して柔らかくし叩きのばす鍛造から、仕上げまで約17工程全てを手作業で行う。最も難しいのは、高温で不規則に生じる「ひずみ」をつちと定規でミリ単位に調整する「ひずみ取り」と呼ばれる作業。完成に向けた作業を経るたびに、別のひずみが生じる。それらをひたすら取り除くと完成だ。オーダーメイドに対応するなど、手作りでしかできないきめ細やかな対応力は評価が高く、全国各地のユーザーから注文が入る。天皇陛下ご使用ののこぎりを二度製作した経験もあり、実績は十分だ。
「職人は仕事ができなくなるまでが修行」。これからも手作りにこだわり、技術を磨き続けていく。
