- 発行日 :
- 自治体名 : 熊本県上天草市
- 広報紙名 : 広報上天草 令和7年11月号
■豪雨災害のその先へ
今年8月に甚大な被害をもたらした大雨。家屋や道路だけでなく、農業にも大きな打撃を与えました。
市では、農業に携わるすべての人が一日でも早く、被災前の営業に戻れるよう農地の復旧や支援に努め、災害に強い基盤づくりを進めていきます。
▽災害の記録
・農地被害

・農作物などの被害(水稲、ブロッコリー、キュウリ、オクラ、ナスなど)
農作物の被害額:11,246千円
果樹の樹体被害額:5,823千円(21件)
・農業用機械やビニールハウスなどの浸水被害
被災経営体:72経営体
被害額:577,672千円
※9月8日時点
▽農家に聞く豪雨災害のその先
今、被災した農家の方々も次に向けて前向きに動き出しています。専業農家の林田久さんは、国道324号線の登坂車線から見える田園風景の一画、約5ヘクタール(サッカーコート7面分)で早期米を耕作しています。今年8月の大雨でこの田園一帯は、大規模な冠水に見舞われ、林田さんも収穫直前の早期米などに大きな被害を受けました。松島町で最も若い専業農家の林田さんは、市の農業を担っていく一人。そんな林田さんに被災した状況と今後についてお話を伺いました。
◎プロフィール
林田久(はやしだひさし)さん
松島町今泉在住、49歳。
早期米のほか、花き(キンギョソウ、ひまわり)を栽培。
また、松島町で最も若い専業農家であり、上天草市では2人しかいない指導農業士※の1人。
経歴:花き農家として就農するが、台風での被災を機に一度離農。その後、別の業界に転職するが、農業のやりがいを思い出し、33歳のころ再び就農。現在まで先代から受け継いだ農地で、早期米の耕作を行っている。
※優れた農業経営を実践しつつ、新規就農者など次世代育成に指導的役割を果たす農家として、県知事が認定する者。
Q.被災当時の状況を教えてください。
A.自宅の浸水はなんとか免れましたが。近所の方が孤立していたので、救助に行っていました。農地が浸水していることはわかっていましたが、自分たちの命を守ることが優先でした。
Q.どんな被害がありましたか?
A.3ヘクタール分の早期米が収穫前に駄目になりました。また、自宅裏に置いていた農業用機械が浸水により故障し、使えなくなりました。ビニールハウスには、ゴミなど流れてきて、片付けに追われました。
Q.農地が被災した心境を教えてください。
A.以前にも耕作物が浸水したことがありましたが、ここまでの被害はありませんでした。農家なので、気象に左右されることは覚悟のうえでしたが、収穫の直前でしたし、収益もそうですが、ここまで管理してきた手間と時間を失うことが何よりも悔しかったです。
Q.被災して、農家を辞めようと思いませんでしたか?
A.正直、被災して1か月は何も手につかない日がありました。しかし、農家を辞めようと思ったことは一度もありません。先代から受け継いできた農地や周りの農家から貰い受けた農地など、積み重ねてきたものが大きく、手放したくはありませんでした。
Q.現在、復興に向けて行っていることはありますか?
A.来年3月の田植えに間に合うように、「今は落ち込んでいる場合じゃない。」と言い聞かせて、駄目になってしまった稲の処分に努めています。また、農家同士がお互いにこのような災害時にも助け合えるように組合を作る準備もしています。
Q.今後の目標を教えてください。
A.まずは、来年以降、通常どおり耕作ができるようにすることが目標です。そして、もっと多くの農地で耕作ができるように、最新機器の導入など、今よりも効率よく農業ができる環境をつくっていきたいです。
Q.今回の災害で学んだことはありますか?
A.今回、このような災害に遭ったことは、自分にとって大きな経験になりました。そして、今から来年3月までの復旧と準備の期間が、将来的にも農家人生の財産になると信じています。
