くらし 【特集】農業の現在(いま)ー豪雨災害のその先へー(1)

暖かな気候を活かし、多種多様な農産物が生産される上天草市。
しかし、昨今は、少子高齢化による農家の担い手不足など、本市の農業に関して深刻な課題も多くなっています。
そして、今年8月に本市を襲った大雨は、多くの農家に被害をもたらしました。
逆境に立たされる本市の農業。大雨の被害を受けながらも、前向きに次へ進む1人の農家を尋ねました。

■上天草市の農業
▽ご存知ですか?上天草市の農産物
静かな海とそこに浮かぶ島々。雄大な山々に囲まれた上天草市では、その立地の良さと温暖な気候を活かして、伝統的に多種多様な農作物が生産されています。

◎上天草市の特産物(農産物のみ)
かすみ草 ユリ菊(電照菊) スナップエンドウ レタス 白オクラ とうがらし たまねぎ きゅうり 湯島大根 早期米モリンガ エリンギ パール柑 ポンカン 不知火(デコポン) あまくさ晩柑 温州みかん

▽データで見る農業の課題
上天草市の農業は、担い手(後継者)不足からさまざまな問題を抱えています。
下のグラフ(1)は農業経営体、つまり農業経営を行う個人、団体、法人が5年以内に引き継げる後継者を確保しているかを示しています。このグラフで5年以内の後継者を確保している68経営体を除いた約80%の農業経営体が、後継者を確保できていないことが分かります。
この後継者不足の結果、グラフ(2)のとおり、上天草市における農家世帯員の平均年齢64・5歳と、熊本県の平均を超える高齢化となっています。これは、県下14市の中で5番目の高さです。また、グラフ(3)では、各調査年ごとの農業経営体数を示しており、令和2年は357経営体と15年間で、農家の数が半分になっています。
このことから、後継者がいなければ、農家の平均年齢が高くなり、廃業に追い込まれる農家が増えることが分かります。この少子高齢化の中で、農業の担い手を確保することが、本市の農業において最も重要な課題と言えます。


▽農業を活性化上天草市の取り組み
市では、農業を取り巻く課題解決のため、認定農業者※を中心に農業経営の規模の拡大、新規就農者に対する技術指導などの相談窓口のサポート体制の充実のほか、計画に基づく生産基盤の整備などさまざまな取り組みを行っています。
※農業経営の改善を目指す農業者として、市に認定された農業者

◎担い手の育成と生産体制の強化
認定農業者を中心に、後継者や新規就農者の育成、営農組織の設立を通じて生産体制の強化を推進しています。
〔取り組みの詳細〕
・国や県による農業関連補助制度の周知と相談窓口の設置
・認定農業者を対象とした営農促進補助金制度の運用
・県やJAと連携しながら、新たに農業を始める人に対しての助言・指導を行う支援体制の充実
・新規就農者が安定的に農業経営できるよう、伴走型支援の強化

・直近3年間の認定農業者の推移

認定農業者の総会などで、担い手や新規就農者の育成のために研修を開いています。

◎生産基盤の整備
農地、農道、水路の基盤整備や維持管理を行っています。また、担い手への農地の集積や農業生産の効率化・高度化による持続可能な農業経営を支援しています。
〔取り組みの詳細〕
・認定農業者を中心に農業経営の拡大、耕作地の集団化・高度化を促進
・各地区の農業基盤の整備による農業生産の効率化を支援
・ドローンなどを活用したスマート農業の推進

◎地域計画の策定と農業振興地域の整備促進
農業者が安定的かつ効率的に営農できる環境を整えるため、地域の実情に合った計画的な農用地の確保と活用を推進しています。
〔取り組みの詳細〕
・「農業振興地域の整備に関する法律」に基づき、平成27年度に市農業振興整備計画を策定
・計画に沿った優良農地の保全および管理
・令和6年度に地域計画を策定し、今後10年間の担い手育成方針や農地の活用方針を明確化