- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県出水市
- 広報紙名 : 広報いずみ 2月号(2026年2月1日発行)
「後悔がないのは、父のおかげなんです」
いつかは訪れる家族や大切な人との最期の別れ。
あなたはその別れの際、悔いなく見送ることができるでしょうか。
「もっとこうしておけばよかった」—繰り返される後悔の声。
今回、日頃から「ある取組」をされている森田さんご家族に話を伺いました。
父との別れを振り返る森田惠美子さんから、後悔の声は聞かれませんでした。
「生前、父は『もしも』のことがあった時のことを考え、私とたくさん人生会議を
してくれました。趣味の車のこと、治療のこと、亡くなった後のことなど様々な
自分の望みを話してくれました。そのおかげで、私は父の望みをしっかりと叶え
てあげることができました。なので、後悔はありません。最期まで自分が望んだ
人生を送ることができた父のように、私も子どもたちと人生会議をしています」
■後悔しない・させないための準備 人生会議
日本全国で上昇し続けている高齢化率。出水市においても、今年の1月1日時点で、65歳以上の割合が人口の34%を超えており、「超高齢化社会」の一途を辿っています。人生の最終段階を迎える人が増加している今、医療現場では本人の希望が不明確のまま、治療を進めなければならないケースが増えています。「本人の希望」に沿った治療を行うため、現在広がりを見せている取組が「人生会議」です。
●『人生会議』とは
病気や事故などで自分の気持ちが伝えられなくなったときのために、「こういう医療を受けたい」「こういう風に過ごしたい」という自分の望みを、元気なうちに信頼できる人と共有する取組。
●『人生会議』を勧める2つの理由
○あなたが後悔しないように
命の危機が迫った状態になると、約70%の人が自分の希望を人に伝えることができなくなると言われています。家族にあなたの希望を伝えておくことが、後悔しない人生を送ることにつながります。
○家族を後悔させないように
医療の進化により、「本人の希望」を確認する場面が増えています。家族にあなたの希望を伝えておくことで、もし家族があなたの治療の判断を委ねられた場合でも、納得して選択することができるため、精神的な負担や、選択時の後悔を減らすことができます。
●『人生会議』を始める前に
○誤解されがちな『人生会議』
市は現在、出水郡医師会在宅医療介護支援センターと協働で、人生会議に関する出前講座など普及啓発活動に取り組んでいます。これまで100名以上の方の最期を看取り、講座では講師を務める岩下隆江さんに人生会議について話を伺いました。
出水郡医師会在宅医療介護支援センター
在宅医療コーディネーター
岩下隆江さん
「人生会議」と聞くと、「死の準備」や「終活」を思い浮かべる方が多いかもしれません。でも、それは少し違います。「終活」は人生会議の一部です。人生会議は、人生の終わりを見つめながら、「自分らしくどう生きたいか」を大切な人と話し合うための対話です。延命治療などについていきなり考えるのではなく、まずはこれまでの人生を振り返り、「自分らしさ」や「自分の価値観」を知ることから始めます。そうすることで、将来どんな医療や介護を望むのかが自然と見えてくるのです。そして何より大切なのは、自分の思いをきちんと周りの人に伝えておくこと。それが、いざというときに自分らしい選択を支える力になります。下記は、私が母を看取った際のエピソードです。もし元気なうちに母と人生会議ができていたら、母と過ごした最後の時間を、こんなふうに後悔することはなかったかもしれません。私のような思いを、誰にもしてほしくない。一人でも多くの方に、人生会議の大切さが届くことを願っています。
●エピソード~後悔の記憶~
聞きたいのに聞けない
私の母は、59歳のときに癌が見つかりました。診断された時には、すでに余命半年。一人の女性として、妻として、そして母として、残された時間の中でやっておきたいことがあるはずだと思いました。けれど、あまりにも短い余命宣告に、父は「とても伝えられない」と言い、強い希望で母には余命を伝えないことになりました。「何かしたいことある?」「行きたいところある?」母の望みをひとつでも多く叶えてあげたいと思いながらも、それを聞くことが、母に「命が短い」と告げてしまっているような気がして、どうしても聞けませんでした。聞きたいのに聞けない——そんな悶々とした日々が続きました。やがて癌は脳へ転移し、お喋りが好きだった母は会話ができなくなりました。私と妹は自宅での介護を望んでいましたが、父は心配のあまり反対。状態が悪化し、救急搬送された日、話せないはずの母から、思いもかけず聞こえたかすかな声は、「家に帰りたい」。それは、母から聞くことができた最初で最後の「望み」でした。けれど、その望みを叶えてあげることはできませんでした。母が喜びそうなことをみんなで考えながら、旅行や外食に連れて行くなどしましたが、本当は他にしたかったこと、伝えたかったことがあったのではないかと思います。もし、元気なうちに母の想いを聞くことができていたら。その思いは、今も心の奥に静かに残り続けており、その後悔が、「人生会議の大切さを伝えたい」という私の想いへとつながっています。
■人生会議の進め方
次の4つの一連の流れを通じて、あなたの意思が更新され、周囲と共有され続けることが理想の形です。人生会議はチーム(あなた・家族・医療者など)で進めるものです。周りを頼りながら、主役であるあなたのペースで進めていきましょう。
STEP.1 考える
人生を振り返り、「今後どのような人生を送りたいか」を考えます。ある程度整理ができてから「最終段階でどのような治療を望むか」を考えてみましょう。
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STEP.2 話し合う
整理した希望や思いについて、家族や医療者などと話し合います。一度ですべてを決める必要はなく、何度でも対話を重ねていくことがポイントです。
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STEP.3 書き残す
話し合った内容やあなたの意思を書面に残しておきましょう。万一の際にあなたの希望を共有できます。ノートを書いていることも必ず周りと共有しましょう。
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STEP.4 見直す
人の価値観や健康状態は時間とともに変化します。初めに話し合った時から数年経てば、健康状態やあなたの希望が変わっているかもしれません。
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STEP.1へ(※詳細は本紙をご参照ください。)
●あなたの想いが残る~マイライフノートのススメ~
あなたの想いや、人生会議で話し合った内容などを書き残す際は、『マイライフノート』をご活用ください。このノートは、あなたの基本情報だけでなく、これまでの人生の振り返りやこれからしたいこと、医療や介護、葬儀に関する事項などを簡単に記入できるようになっています。あなたの人生会議を一緒に進めるための良き相棒になってくれます。
ノートは「いきいき長寿課の窓口」で無料配布しています
■私たち『人生会議』始めてます Advance Care Planning
○母 森田惠美子さん
父との経験を次の世代へ
父は日頃から、「俺にもしものことがあったら」と冗談を交えながら話をしていました。そのおかげで、父が入院した時、あの時の言葉を思い出し、悩むことなく父の望みを叶えてあげることができました。後になって、父との「人生会議」がどれほど助けになったかを実感しました。今、かつての父のように、私も冗談を交えながら子どもや孫に自分の望みを伝えるようにしています。
○子 大塚いずみさん
オープンな姿から学ぶ
父と母は、日頃から「また砂蒸し風呂にみんなで行こうよ」「認知症カフェでしたいことがあるんだ」など、私や孫にこれからの望みを話してくれます。そしてその話の中で「癌がわかったらすぐ教えてね。隠し事は無しよ」など冗談を言いながら、もしもの時の望みも教えてくれます。2人がオープンで前向きな姿を見せてくれたおかげで、私自身も今後の人生のことを考えるようになりました。
○父 森田 和明さん
父との経験を次の世代へ
あれも、これもしたい
定年後、残りの人生と向き合い、これまで清掃作業や民生委員などの地域貢献、今後に生かせる資格の勉強をしてきました。今回、縁があり、自治会内で人生会議の出前講座をしていただき、マイライフノートと出会ったのですが、書きながら自分の人生を振り返っていると、これからやりたいことがたくさん見つかりました。あれもしたい、これもしたい。楽しい時間がこれからも続きそうです。
●後悔のない人生を送るために今話そう
『人生会議』に正解はありません。話す内容や書き方など、悩まれることがあれば、お気軽にご相談ください。出前講座も実施していますので、ぜひご活用ください。
次に家族が集まる時、それは『人生会議』を始めるチャンスです。
「みんなが今一番大切にしている時間は何?」「今行ってみたい場所ってある?」
こんな会話から、家族それぞれの思いや願いが見えてきます。
『人生会議』の先に、後悔しない”あなたらしい”人生が待っています。
問合せ:いきいき長寿課
【電話】63-4053
