- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県西之表市
- 広報紙名 : 広報にしのおもて 市政の窓 2026年2月号
西之表港を見下ろす栖林神社で正月11日、年中行事の大的始(おまとはじめ)式が催されました。年の始めに悪魔災難を払い清め、島内の平安、無病息災と五穀豊穣を祈願する伝統の儀式に大勢の観覧客が集まりました。
鹿児島県指定の無形民俗文化財で、起源は12代島主種子島忠時の時代である文亀元(1501)年、弓の指南役が宮中で行われていた御的始を伝えたことにあります。烏帽子(えぼし)などの古式装束を身につけた射手6人が中庭の通路沿いに鹿皮を敷いて座り、静々と板の間に行き来して厳かな所作を繰り返し、2射ずつ3回計各6本、合計36本の矢を放ちます。弓太郎と弓次郎など一番組から三番組まで二人一組となって道場に立ちました。魔除けの象徴とされる「犬」の文字を小さな砂山に弓で書いた後、天を払い、地を払い、1本目は「やあーっ」と長く、2本目は「えいっ」と気合いの声を響かせます。35本までは全て的中。「満つれば欠くる」の戒めから、最後の1本は定め通りわざと外しました。
行射の3時間弱、私は射手の後方に控えました。観覧席としては特等席とはいえ、深々と冷え込む寒気の中でじっと座っているのはなかなかの苦行です。素肌にひとえの素襖(すおう)を着て片肌を脱ぐ射手を考えれば、意気地のないことですが、冷気は手足、首、背中と全身にしみ込んできました。
式が終わると、5尺8寸の大的の前に観覧客たちが集まってきました。的の紙を小さく破き杉の葉を包んで持ち帰り、家の魔除けにするためです。
矢取役の河野博聖さん(小学6年生)、松明の係を務めた大的始式保存会のメンバーらが29代島主の種子島時邦さんや家族、友人たちとにこやかに記念写真を撮っていました。五百年以上続く年中行事が大切に伝承されていることを誇らしく思う一夜でした。
