- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県日置市
- 広報紙名 : 広報ひおき 令和7年5月号(5月14日(水)発行)
「沈壽官(ちんじゅかん)家茶室 鶴壽軒(かくじゅけん)」国登録有形文化財に
日置市教育委員会社会教育課文化係
令和7年3月21日、国の文化審議会は、「沈壽官(ちんじゅかん)家茶室 鶴壽軒(かくじゅけん)」(日置市東市来町美山)を国登録有形文化財(建造物)に登録するよう文部科学大臣に答申しました。今後、官報告示を経て登録される見込みで、市内では3件目、戦後建築物としては、初の登録となります。
鶴壽軒は、昭和44年(1969)建築の木造平家建の茶室です。外観は宝形(ほうぎょう)造の鉄板葺(ぶき)で、南・東面は軒(のき)が深くなっています。茶室内部は、上座に床(とこ)を構える八畳の広間で、茶室中央寄りに湯を沸かす炉(ろ)がありますが、床脇(とこわき)にも炉とともに水屋に通じる茶道口があり、茶会の趣向に応じて小間据(こます)えとしても使えるようになっています。床柱の絞り丸太や床框(とこかまち)の面皮(めんかわ)丸太は、希少な北山杉を用い、土壁も聚楽土(じゅらくつち)の切り返し仕上げで、サビにより、下地の貫(ぬき)や柱が浮かび上がっています。
伝統的な茶室の様式に職人の洗練された技術が垣間見えるこれらの意匠には、裏千家第14・15代家元 千宗室氏の好みが表れています。第14代沈壽官氏(1926-2019)は、裏千家第15代家元千宗室氏と親交があり、茶の湯を嗜(たしな)んでいたことから当茶室を建築したとされます。建築当時の高度経済成長期には、全国でも多くの茶室が造られましたが、改修により原型を留めていないものも多い中、当茶室は増改築による間取りの変更もなく、築50年を経ても保存状態も良いため、造形の規範となっているものとして、答申されました。
今年は、日韓国交正常化60周年の年でもあります。駐鹿児島韓国名誉総領事でもある第15代沈壽官氏にとって、当茶室は、茶の湯の日本文化の発信と文化交流の拠点としても注目されそうです。
(令和7年4月24日作成記事)