京丹後市立弥栄病院外科 高塚聡
■鼠径ヘルニアとは
足の付け根(鼠径部)の筋肉の隙間からお腹の臓器が飛び出す病気で、腸が飛び出すことが多いので脱腸とも呼ばれます。立っている時やお腹に力を入れた時に鼠径部が腫れ、初期は手で押さえたり寝転んだりすると元に戻りますが、放置しておくと大きくなって不快感や痛みを伴います。腸が締め付けられて戻らなくなった状態をカントンといい、激しい痛みと腸が腐ってしまうため緊急手術が必要となります。
▽鼠径ヘルニアの原因
乳幼児期の場合は、先天的な原因で発生します。成人の場合は、加齢によって腹壁の組織が弱くなることが原因で、40歳以上の男性に多く発生します。また、お腹に力を入れる習慣のある職業や便秘、肥満、前立腺肥大、妊婦にも発生しやすくなります。
■鼠径ヘルニアの治療と手術方法
治すためには手術が必要で、カントンの場合は腸を切除することもあります。以前は筋肉の隙間を縫合して閉じていましたが、近年は、合成繊維でできた網目状の人工膜(メッシュ)をお腹に入れ、弱った腹壁を補強する方法が主流となっています。なお、弥栄病院では、国際ガイドラインに準拠した人工膜を用いる最新の治療法を行っています。人工膜を入れる方法には、お腹の中から入れる腹腔鏡下手術と、腹壁の前から入れる前方到達法があります。
▽腹腔鏡下手術腹腔
鏡で観察しながら、腹膜を剥離し筋肉と腹膜の間に人工膜を挿入します。傷痕が目立たず痛みも少なく回復が早いのが特徴で、両側でも同じ創で行えるという利点もあります。全身状態が良好な患者さんに対し第1の選択としています。
▽前方到達法
鼠径部を切開して、脱出している腹膜の袋を切除します。人工膜を挿入して、弱っている腹壁を修復します。通常は下半身だけの脊椎麻酔で行い、全身麻酔が困難な患者さんや下腹部の手術・前立腺の手術経験がある患者さんに対して行います。
気になる方は、まず医師に相談してみましょう。
問合せ:弥栄病院
【電話】0772-65-2003
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