◆サプリメント“紅麹コレステヘルプ”の腎機能障害について
上記のサプリメントを服用していた人の一部に、腎機能障害が生じ5人が亡くなられています。現在、腎機能の障害の原因が調べられている最中です。カビ毒、アレルギーなどが疑われているようですが、まだ結論が出ていません。
このサプリメントのうたい文句は“悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす”というものです。健診などで悪玉コレステロールが多いと指摘されて、このサプリメントを多くの人が購買されていたのではないでしょうか。
この商品について調べてみたら、驚くべきことに、ロバスタチン(モナコリンK)というコレステロール低下作用のある物質が含まれていることが分かりました。私はこれが今回の薬害の原因だと疑っています。この物質は紅麹カビが産生するみたいです(量は少ないというが)。欧米では実際に、高コレステロール血症の治療薬として使われています。日本で多く使われている高コレステロール治療薬も同類の薬物です。
腎障害を起こした人には、筋肉痛と尿の色が濃かったという症状があったらしいです。ということは、腎機能障害の原因は“横紋筋融解症”ではないかと思われます。横紋筋融解症はコレステロール低下薬でごくまれに生じる副作用です。
前回の診療所だよりにも書きましたが、コレステロールの本来の役割の一つは細胞膜の材料になるということです。俗に悪玉コレステロールといわれている“LDL―コレステロール”は肝臓で作られたコレステロールを体の各部に届ける大切な役割があるのです。
LDL―コレステロールが悪玉というならば、下げれば下げるほど健康に良いと思いがちになりますよね。それは誤解です。肝臓から組織に必要量のコレステロールが供給されなくなると、組織障害が起こるでしょう。特にいつも運動している骨格筋の細胞膜が壊れ、筋肉に含まれているミオグロビンという蛋白が血中に漏れ出てきます。ミオグロビンが腎臓の尿細管に詰まると急性腎不全を起こします。尿まで出てくると尿が赤くなります(ミオグロビンは血液のヘモグロビンに似ていて、赤色です)。これが横紋筋融解症です。
今回の問題は、不特定多数の人(多くは健康な人たち)が購買するサプリメントにコレステロール低下作用のある“医薬品”が含まれていたことです。サプリメントの限度を逸脱していましたね。
“善玉と悪玉”“血液サラサラとドロドロ”などは、人々に健康不安をあおり、そしてサプリメントなどの商品を買ってもらおうと、たびたび用いられる用語です。ご注意ください。
国民健康保険脊振診療所 牛島 幸雄
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