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自治体の皆さまへ

〔特集1〕手話がつなぐもの(3)

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埼玉県北本市 クリエイティブ・コモンズ

■手話通訳のお仕事
北本市社会福祉協議会で「専任手話通訳者」として活躍する小倉明美さん・池上美津子さんに、あまり知られていない「手話通訳者」のあれこれを訊きました。

〔小倉明美さん〕
好きな手話「手伝う」
左手の立てた親指の背を右手のひらで前に押し出すように2回叩く

〔池上美津子さん〕
好きな手話「つながり」
両手2指の輪をつなぎ合わせる

『「この人の言葉をそのまま伝えよう」と思うなら、性格や背景も理解しないといけない』
『「通訳の先輩たちの力になりたい」がきっかけ』
『聞こえない皆さんにたくさん助けられてきた』

◇お二人が手話通訳の道を志したきっかけを教えてください。
小倉さん:最初は一般企業に就職して、手話はかじった程度でした。聞こえないお客さんを拙(つたな)い手話で対応したのがきっかけで、手話に力を入れて聞こえない人たちと触れ合うようになったんです。家に招かれたときは、全く音がない家にショックを受けましたよ。「聞こえない暮らしはこうなんだ」と一生懸命伝えられ、力になろうと。結婚式の手話通訳を頼まれたことも大きかったですね。当時は通訳の資格もなく、出会って1、2年の私をそこまで信頼してくれたことに心を打たれて、本格的に手話通訳になろうと思ったんです。
池上さん:友人が大学に通い直すと聞いて、自分も何か始めようと思ったときに、手話奉仕員養成講習会を知りました。学び始めて、通じた!嬉しい!と楽しんでいましたが、通訳の先輩たちが本当に忙しそうで。通訳者の必要性を感じて、手話通訳者の試験を受けたんです。

◇手話通訳者には「専任手話通訳者」と「登録手話通訳者」がありますが、この違いはなんでしょうか。
小倉さん:登録手話通訳者は、派遣先に出向いて通訳を行い、報告書を提出します。派遣先は、行政の行事から聞こえない人が行く病院や学校などさまざま。専任手話通訳者は、派遣内容に合わせて、依頼者や通訳者のコーディネートを行います。登録手話通訳者さんと定期的に会議をしたり、依頼者の聞こえない人たちの相談に乗ったりもします。もちろん、私たちも通訳を行いますよ。
池上さん:登録から専任の手話通訳者になると、聞こえない人たちとの関わりも深くなって、初めて知ることがたくさんありました。もっとサポートが必要だと思っていたのが、独力で生活している姿を見て逞しさも感じましたね。

◇手話通訳をするときに意識していることはありますか。
池上さん:「間違いのないように」というのはいつも意識しています。それに、聞こえない一人ひとりに合わせて気をつけることがいろいろありますね。「通訳の先輩たちを助けたい」とこの仕事を始めましたが、現在は聞こえない皆さんに、「池上なら」と信頼される手話通訳者になりたいし、「通訳がいたおかげで何とかなった」と言われるとやりがいを感じます。
小倉さん:手話通訳者と聞こえない人の絆ってとても深い。「この人の言葉をそのまま伝えよう」と思ったら、その人の性格や背景も理解しないといけない。時には、家族以上に近い関係になることもあるんです。それをベースに意識しているのは「この人は手話通訳者に何を求めているか」ということ。例えば、診察を受ける時に、本人が医師に言ってほしいこと、言ってほしくないことを理解した上で一緒に診察室に入って、本人が話しやすい空気を作るようにしています。

◇聴覚障がいのある人もない人も垣根なくつながるために、今後やっていきたいことはありますか。
池上さん:手話奉仕員養成講習会に毎年15人ほどが参加します。ここで手話ができる人、聴覚障がいに理解がある人を増やしていきたいです。
小倉さん:私はこれまで、聞こえない人たちに励まされたり、見守られたりと、たくさん助けられてきました。「障がいのある募集人員…助けられる存在」ではなく、同じ場所にいる人同士、困ってることがあれば助け合う。それが普通なんだと知ってもらいたい。福祉とか障がいに関わりのない人たちに、簡単な手話を知ってもらったり、今回の取材も「専任手話通訳者に聞いてみよう」とつながるきっかけになったら良いなと思います。

・小倉さん、池上さん含む手話通訳者や手話勉強中の人や興味のある人、聞こえない人などで構成する「手話べりかふぇ」のメンバー(本紙写真参照)。手話でのおしゃべりを楽しむカフェを切り盛りする。
※手話通訳豆知識…通訳者の皆さんは黒等の濃い色の服装が多い。これは、手話を見えやすくするためです。

■手話通訳の現場-聴覚障がい者向けフラレッスン-
フラ・キエレさんが聴覚障がいのある人向けにフラレッスンを初開催!ここでも手話通訳者さんが活躍していました

◇フラ・キエレ 草野朋子さん
聴覚障がいのある人たちのフラダンスを見たのがきっかけで、聞こえない人たちともフラを楽しみたいと今回のレッスンを企画しました。手話通訳者さんにあいさつの手話も教えてもらい、聞こえない皆さんは口元を見るとのことなので、口の動きが見えるようにはっきりしゃべってジェスチャーしました。音楽に乗るのは難しいと思っていましたが、皆さんしっかり私の動きについてきていて、最終的に1曲通しで踊ることができ、楽しんでいただけたようで良かったです。

・先生のお手本のフラダンスも一緒に踊りながら手話で伝えます
・口の動きも大切!大きく口を動かして手話とともに伝えます
・記者さんの取材も横で手話通訳!
・低音は聞こえる場合もあるので、「イプへケ」という低音の打楽器も使いました
・聞こえない人からも「フラダンスには興味があったけど聞こえないからきっかけがなかった。今日はとっても楽しかった!」との声がありました

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