狭山市の特産品として多くの人に親しまれている狭山茶。生産者や茶商といったお茶に関わる人々が、長い時間をかけてその深い味わいや豊かな香りを追求してきました。一方、お茶を飲む消費者の間では、飲食物の需要や消費が多様化し、ペットボトルのお茶や粉末茶などが普及しています。
タイトルの「2.0」は、ソフトウエアがアップデートすることによって新しいバージョンとなる際などに用いられるもの。今月は、飲食に関する選択肢がさまざまに増えていく中で、時代の流れに合わせてアップデート、言い換えると「進化」を続けている狭山茶の「今」をお伝えします。
■種類や飲み方などスタイルが変わっても狭山茶の持つ魅力は不変です
狭山市茶業協会 会長 奥冨達さん(寿園)
◇急須の文化を残しつつさまざまな楽しみ方を
私が茶業者として働きはじめたのが36年前。当時は、各家庭で急須を使って入れたお茶を飲む習慣が今よりもずっと定着していて、茶葉を300g単位で買い求める方が主でした。しかし、現在では100g単位で購入されるお客様が主流となっています。若い世代にとっては、急須を使って茶葉からお茶を入れるよりも、ペットボトルのお茶や粉末を使うお茶を飲むことの方が多いのかもしれません。
協会員が小学校でお茶の入れ方の教室を行った際に、家に急須があるかと尋ねたところ「ある」と答えた割合は市内で約4割、都心では約1割という結果だったそうです。飲み物の選択肢が昔より増えたことで、お茶の立ち位置も変化しているのではないでしょうか。
茶業に関わる者としては、急須でお茶を入れる文化を大切にしたいという思いがありますが、これからの時代はそれ以外の方法も提案していく必要性も感じています。皆さんがそれぞれのライフスタイルに合わせてお茶を楽しんでいただくのが一番ですね。
◇萎凋茶(いちょうちゃ)(*)、和紅茶、そしてビールも!?
茶業のこれからを担っていく若手茶師たちの取り組みには、目を見張るものがあります。濃い味の深蒸し茶を主に作ってきた私たちの世代とはまた異なった視点で、狭山茶と向き合っています。それは萎凋茶であったり、ビールであったり。さらに、茶葉を発酵させた和紅茶などに力を入れている茶師もいます。また、事業者だけでなく、地域の学生たちも狭山茶の加工を通して地域とつながる活動をしています。
多様性を認め合う世の中だからこそ、狭山茶もいろいろなスタイルの変化を求められていくのでしょう。それでも狭山茶が持つ魅力は変わりません。
(*)製造の工程で、茶葉をしおれさせる緑茶。花や果物のような香りがすることが特長
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