本市では新しい市史を作る「市史編さん事業」に取り組んでいます。新たな市史を刊行するのは、およそ半世紀ぶりです。
令和12年度までに「原始・古代」「名取熊野」「自然と暮らし」「中世・近世」「近代・現代」の計5巻と普及版1巻を刊行する予定です。
現在の市史(旧市史)は昭和52年に出版されました。順次、刊行予定の新しい市史には、旧市史の刊行後の調査・研究で分かった知見や出来事などが記述されます。
■どう作る新・『名取市史』
市史編さんはどのように進められているのでしょうか。日々の作業を見てみましょう。
市史編さん室に入り、まず目につくのは、ブラシを使って古い書籍などの資料をきれいにしている人たちです。
借用や寄贈などで市に寄せられた資料はこうしてクリーニングされた後にデジタルカメラで撮影し、電子データ化。市史の執筆に携わる専門家に瞬時に共有されます。これらを素材に市史が作られます。
執筆陣は約50人。多くが大学の研究者や博物館などの学芸員、郷土史家など。「原始・古代」や「中世」「近代・現代」など6つの部会ごとに調査と執筆を担います。
遠方に住んでいる専門家も多く、電子データの共有によって、作業が効率化できるといいます。
書かれた原稿は、記述内容に誤りがないかどうかをチェックする「校閲」、文章の校正を経て出版。新しい『名取市史』として世に放たれます。
■資料集めに奔走
市史を作るうえで、地域の歴史を物語る資料を多く集めることが不可欠です。
市史編さん室の鳥居建己・主任専門員は「編さん事業の大半は資料の収集。必要な資料をいかにたくさん集められるかが成功の鍵になる」と話します。
江戸時代の古文書が特に不足しています。そのため、市内の旧家を訪れるなどの資料調査を継続的に実施していますが、まだまだ不足しており、同室は「古い資料を持っている方はぜひ市史編さん室に連絡してほしい」と話します。
■なぜ市史を作るのか
旧市史の刊行からおよそ50年ぶりとなる新たな市史作り。その意義を鳥居主任専門員はこう説明します。
「歴史の書物は一度発行して終わりではありません。内容を更新して歴史を記録していかなければならないのです」
地域の歴史や文化を書物にまとめたものは古くから各地で作られ、刊行後も随時、内容が付け加えられるなどしてきました。
江戸時代の仙台藩では、藩の命令で度々出版。享保4年(1719年)の『奥羽観蹟聞老志(おううかんせきもんろうし)』を皮切りに、何度か歴史をまとめた本が作られました。
大正時代以降の名取でも複数の歴史の本が刊行され新たに追記されたり、編集されたりしてきました。
たとえば、昭和5年の『高舘村誌』(高舘尋常高等小学校刊)は、同13年に再版。刊行年が不明の『愛島村誌』(愛島尋常高等小学校刊)にも追記の痕跡が残っているといいます。
鳥居主任専門員は、「当時の人たちがどのように歴史を残していくかという試行錯誤の思いが伝わってくる」と話します。その上で「先人の思いを受け継いで良い市史を作っていきたい」と力を込めました。
・市史編さん室の鳥居建己主任専門員
・資料のクリーニング作業。ブラシを使ってほこりや汚れを払っていく。書籍は1ページごと丁寧にクリーニングしていく
・資料をデジタルカメラで一点ごと撮影、電子化
・電子化された資料は、瞬時に執筆者らに共有化
・専門家が集まる会議で編集方針を決める
・市史編さん室に保管されている資料。古文書などの資料は「もんじょ箱」と呼ばれる専用の保存箱に収められている
※詳細は、本紙P.3をご覧ください。
◆[市史編さん室より]歴史の資料を収集中です
風景や行事の写真、地図や絵図、店舗のチラシや広告、町内会の資料、何が書いてあるか分からない文書(もんじょ)などなど。「これはどうだろう」と思ったら、市史編さん室にご一報ください。
問合せ:市史編さん室
【電話】290-2090
【E-mail】shishi@city.natori.miyagi.jp
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