■被害を未然に防ぐ
今年3月とおととし9月、町内のコンビニエンスストアの店長が特殊詐欺の被害を防止したとして、都城警察署から感謝状を贈呈されました。自分の身を自分で守るために、家族や身の回りの人を守るためにできることを考えます。
▼INTERVIEW
○これからも声掛けを続けます
セブンイレブン三股樺山店
店長 中山 恵美さん
今年3月、お店に高齢女性のお客様が来られました。レジに電子マネーのプリペイドカードを持ってこられて「このカードの番号を相手に送りたいんだけど、方法が分からないから教えてほしい」と言われました。「それは詐欺じゃないですか?」と尋ねると「詐欺じゃない。高額当選のメールが来たから送りたい」と携帯電話に届いたメールを見せてくれました。高額当選がメールで来ることも怪しく思いましたし、メールにはところどころおかしな日本語があったので「やっぱりこれは詐欺ですよ」と伝え、警察にも連絡して防止することができました。
この件もおととし9月も、お客様に特殊詐欺の知識はあるけど、これが詐欺だと気付いていないことや今日中にお金を振り込まないといけないといった時間の制限があったことが共通していました。
実は、これまでにも怪しいなと思うことは何度かありました。今回は、メールを見せていただけたので確信を得ることができましたが「孫に頼まれて」や「大丈夫、大丈夫」と言われてしまうと、それ以上深く追求することができないのも事実です。疑うときりがないし、疑わないと防げません。もどかしく感じることもありますが、これからも声掛けを続けるとともに、相談しやすい雰囲気を地域の皆さんと一緒に作っていきたいと思います。
▼INTERVIEW
○「私は大丈夫」が一番危ない
都城警察署 生活安全課地域安全係長
佐藤 英三警部補
都城警察署管内では、6月に都城市で不審電話が発生しています。電話の内容は、市役所職員を名乗る男から、還付金が生じたことを2月に封書でお知らせしたが返事がないので連絡した、銀行の者から電話があるので対応をお願いしたいというものでした。このケースでの被害はありませんでしたが、特殊詐欺のような犯罪は時代に合わせて変化し、より巧妙になっていきます。中には、詐欺被害に遭っていることに気付いていない人さえいるかもしれません。最近では、固定電話だけでなく、スマートフォンに届いた高額当選、サイト利用料金未納や芸能人をかたるメールやメッセージから被害に遭う人もいます。
特殊詐欺では、人の心の隙を突いてくるところに注意が必要です。例えば、1時間以内に手続きをしないとお金を渡すことができないなどといって焦らせることで、冷静な判断ができないようにします。また、言葉巧みに本当か嘘か分からなくさせて信じ込ませます。実際に、特殊詐欺を未然に防いだ現場で、警察官が「これは詐欺だから、お金を払ったらだめですよ」と言っているのに「いや、詐欺じゃない。これを払えば億単位のお金が入ってくるから大丈夫」と、目の前にいる警察官の言葉より、姿が見えない人からの電話やメールの言葉を信じているということがありました。
実は「私は大丈夫」という人が、一番危ない人でもあります。先ほどの被害に遭いかけた人も、特殊詐欺というのがあるということは当然にご存じです。しかし、「自分が狙われることはない」、「これは詐欺ではない」といった自信が、時に裏目に出てしまうことがあるのです。
被害に遭わないために有効な対策の一つが、家にいるときにも留守番電話を設定するなどで犯人からの電話に出ないことです。また、今の固定電話機には、通話内容を録音できる機能が付いたものがありますし、警察署ではおおむね65歳以上の人を対象に自動通話録音機の貸し出しも行っています。特殊詐欺の電話に1人で対処することはとても大変です。大切なのは、相手の言うことをうのみにせず怪しいと思ったら電話を切ること、そして身近な人や警察に相談することを意識してほしいと思います。
県警では、特殊詐欺の被害を防ぐために「特殊詐欺被害防止コールセンター」を設置して県民の皆さんに電話で特殊詐欺被害防止の呼びかけ、特殊詐欺の手口に関するお知らせを行っています。私が各地区の公民館などで安全講習会なども行いますので、ぜひ活用していただきたいと思います。警察だけでなく、家族や地域が一体となって犯罪のないまちにしていきましょう。
■闇バイトは犯罪です
家族や友達と連絡を取る、動画やSNSを見るなど、世界とつながるスマートフォンは今や生活必需品の一つです。しかし、便利なだけではありません。
SNSなどに潜む危険の一つに、仕事の内容を明らかにせず著しく「高額報酬を支払います」として犯罪の実行者を募集する、いわゆる「闇バイト」があります。「高額バイト」、「即日入金」、「書類を受け取るだけ」。一見、好条件に見える求人情報には注意が必要です。簡単に高収入が得られるならと応募したために、強盗や詐欺などの犯罪に加担し逮捕された高校生や大学生のニュースを見たことがある人もいるのではないでしょうか。「一度だけなら大丈夫」。そんなことは絶対にありません。
■知ることで判断できる
高校生や大学生にとって、SNSの情報が安全な情報か危険な情報かを判断するために必要なことは何でしょうか。それは、正しく判断できる大人の知識です。どう正しいのか、何が危険なのかを事前に伝えておくことで、いずれ触れる危険な情報に正しく対処することができます。
■家族や地域の力が必要です
私たちは「特殊詐欺」という言葉やその手口を、ニュースや新聞などでたくさん聞いています。そして、どのようなものか知っているのだから、被害に遭うことはないという自信も持っています。しかし、実際に悪意ある電話がかかってきたときやパソコン画面に虚偽の表示がされたとき、不安を感じずに「これは詐欺だ」と冷静な判断ができるでしょうか。町内で被害に遭った人がそうであったように、いくら自信を持っていても、突然の出来事でパニックになると、突拍子もない話を信じてしまったり、普段はしないような行動をとってしまいます。
特殊詐欺の被害を未然に防ぐために必要なもの、それは家族や地域の中にいる、相談できる人や異変に気付くことのできる人の存在です。不安や焦りに心を埋め尽くされてしまうことは、暗闇の中を明かりもないまま進むようなもの。そんなとき、頼りになる人に相談することや周りの人からの優しい言葉は、不安や焦りを安心に変えてくれます。
家族の絆、地域の力で特殊詐欺の被害から身を守りましょう。
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