精神科 医師 手塚 裕之
■運動とメンタルヘルス
みなさん、こんにちは。月一回、第四月曜日の午後から精神科の外来診療を行っている手塚です。
本日は「運動とメンタルヘルス」についてお話します。皆さんは運動していますか?私は昨年十月から週一から二回、一回三十分の水泳を始め、千メートルは泳ぎ続けられるようになってきました。
「運動が健康に良い」ということは広く知られています。最近の研究では、運動が「体」に良いというだけでなく、認知機能の向上、加齢に伴う変化や神経変性の抑制、神経障害からの回復など運動が「脳」の健康にも有益であると分かってきました。
特にうつ病※のような慢性的な疾患に関しても、運動により脳の可塑性(脳が自らを変化させる能力)を刺激して脳が強くなったり、運動による気分が良くなるホルモンの増加でうつ病の症状を改善してくれたり、運動によってネガティブな思考をずっと考え続ける問題から意識を逸らすことができるなど薬や認知行動療法といった専門的な治療と同等かそれ以上の効果を認めると報告されています。
※「病状において運動が可能な患者さん」が対象です。運動を定期的に実践する場合は主治医の先生と相談してください。
今年二月にBMJという世界五大医学雑誌に「どんな運動が最もメンタルヘルスに効果的なのか?」というテーマの論文が掲載されました。
トップ五を紹介すると、五位ジョギングやサイクリングなど複数の有酸素運動を組みあわせ、四位筋トレ、三位ヨガ、二位ウォーキング・ジョギング、一位はダンスという結果でした。
この結果から「さあ、みなさん踊りましょう!」というつもりはありませんし、「ダンスしなきゃ」と焦る必要もありません。私の行っている水泳もランク外でした。あくまで今回のデータからは「ダンス」が一番だっただけで、どの運動も「続けること」できちんと前述の効果は認められています。運動は続ければ続けるほどメンタルヘルスにはいい影響が期待できます。自分が最も楽しく、生活の一部に取り入れられるような運動をぜひ探していきましょう。
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