■変形性膝関節症について
山梨大学医学部附属病院 整形外科 助教 芦沢知行
みなさんは日常生活の中で膝が痛いということはありませんか?膝関節の痛みを自覚されている中高年の人の多くは変形性膝関節症です。テレビCMなどでも目にすることもあり、ご存じの人も多いと思います。変形性膝関節症は膝の軟骨がすり減ることにより関節の変形が進行し、主に体重をかけた時に膝関節に痛みを生じる疾患です。レントゲンなどの画像検査で、関節の隙間が狭くなっている様子や、骨棘(こっきょく)といわれる過剰な骨の形成をみとめることで診断されます。わが国では約1,000万人もの人が変形性膝関節症による膝関節痛に悩まされているといわれています。
変形性膝関節症の原因は、主に加齢に伴う膝関節軟骨の老化、摩耗によるものです。遺伝が関係しているとも考えられており、約80%が女性の人で、わが国では膝の内側の軟骨がすり減り変形が進行してくる、いわゆるO脚といわれるような内反膝になっていく人がほとんどです。また、加齢だけではなく、股関節の変形があり、脚の動きが制限されていたり、それに伴い脚の長さが左右で違う場合に、膝に負担がかかり結果的に変形性膝関節症となってしまうこともあります。その他、怪我などで膝関節周辺の骨折、靭帯損傷(特に前十字靭帯損傷(ぜんじゅうじじんたいそんしょう))や半月板損傷の受傷、さらに関節炎などが変形性膝関節症を引き起こすこともあります。肥満も膝にかかる負担が大きくなってしまうため変形性膝関節症になるリスクを高めてしまいます。
治療としては、軟骨のすり減ることを食い止める効果的な治療法は残念ながら確立されておりません。症状の改善や悪化の防止には筋力強化、特に膝を伸ばす筋肉(大腿四頭筋)を鍛える、肥満であれば減量する、温めて血行を良くするなどで一定の効果をみとめます。また、内服薬や外用薬の使用、膝関節内へのヒアルロン酸注射、リハビリテーションや装具なども症状を改善する手段となります。変形が進行し、痛みが良くならない場合は手術加療を検討します。手術成績は安定しており、人工膝関節全置換術が多く選択されますが、変形の状態などによっては自分の関節を温存できる骨切り術や、より侵襲(しんしゅう)が少く、部分的に人工関節に換える部分置換術が世界的に増えています。現在はまだ成績は安定してはいませんが軟骨の再生医療も始まっています。今後さらなる医療の発展に期待していきたいと思います。
企画 一般財団法人 里仁会
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