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地域ぐるみで進めていく鳥獣被害対策

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岩手県住田町

全国で増え続ける野生鳥獣による農作物の被害。本町も例外ではありません。鳥獣による被害は、農家の営農意欲の低下も招く非常に深刻な問題です。
本号では、鳥獣がもたらす深刻な被害の状況をお伝えするとともに地域での鳥獣被害防止のための対策について考えていきます。

■鳥獣被害の発生状況
町内の鳥獣による農業被害は、令和5年度に1千万円の大台に乗り、これは3年度の3・6倍に相当します(図1参照)。
鳥獣別の被害額を見ると、平成26年度に7割を占めていたニホンジカによる被害は、令和5年度には2割程度まで低下しています。一方、平成26年度に報告の無かったニホンザルとイノシシによる被害は、令和5年度には、両者を合わせて全体の6割に当たる632万円の被害をもたらしました。これは、ニホンジカ被害の2・8倍に相当します(図2参照)。
ニホンザルによる農業被害は平成27年度に、イノシシによる被害は令和3年度に、それぞれ初めて報告されました。従来は町内の一部の集落で発生していた農業被害は、ニホンザルとイノシシの出没に伴い、町内のほとんどの集落で発生するようになり、被害額の大幅な増加の一因となっています。

〔図1〕鳥獣による農業被害額

〔図2〕鳥獣別農業被害額(万円)

■鳥獣の基本生態と対策
効果的な鳥獣被害対策には、鳥獣の特性を知ることが重要です。
次では、ニホンザルとイノシシの生態などについて掘り下げます。

◆ニホンザル
▽基本生態
・おおむね40頭程度での群れを作って移動し、その移動範囲は100平方キロメートルになることもある。
・立体的な動きを得意としており、垂直・水平で約2メートル跳ぶ。
・学習能力・記憶力が高く、高い運動能力と合わせて行動制御が難しい。

▽効果的な被害防止対策
電気柵の設置、または既存のシカ防護網の上部に柵線を設置し通電することで、柵へのよじ登りをさせないことが効果的です。

◆イノシシ
▽基本生態
・主に植物を中心とした雑食性の動物で、エサとなる草の葉や根、種子などが豊富な圃場に多く出没するため、集落周辺に生息。
・大型獣類の中では特に多産で、1年に平均すると4~5頭の子を出産。
・警戒心が高く、臆病で注意深い。しかし、危険を感じたときや興奮した際には、攻撃的になる場合がある。また、人や人の生活環境に慣れると、行動が大胆になる場合がある。

▽効果的な被害防止対策
地面と侵入防止柵の間の数センチの隙間をこじ開けて潜り込むようにして侵入します。そのため、柵の下側や連結部分に隙間を作らないように設置することが効果的です。

■町の取り組みと支援
町・関係機関・住民が一体となった被害防止対策を進めていくため、昨年度は主に次の取り組みを行いました。

◇シカ防護網等緊急設置事業費補助金
農林業振興会などの団体が緊急的に行う鳥獣害対策設備の設置に要する経費の一部を、予算の範囲内で補助しました。

◇電気柵などの設置
〔電気柵〕
対象地区:月山、両向、天嶽、火の土、上町、川口
〔複合柵〕(金網柵と他の防護柵を組み合わせたもの)
対象地区:両向

◇ニホンザル生息域調査
群れの行動範囲や個体数の増減などを把握し、今後効果的な鳥獣対策を実施していくための参考としました。
対象地域:町内全域

◇動物位置情報システム(アニマルマップ)
GPS発信機を装着した群れが生息する地域に、位置情報を受信する基地局システムを設置しました。
今後は、群れの行動範囲や個体数の増減などの動向に注視しながら、効果的な鳥獣対策を検討していきます。
対象地区:中沢、天嶽

■地域一体での被害防止対策を
急増するニホンザルやイノシシ被害について、町では上記対策のほか地域の農業者を対象に被害防止対策の研修会を開催するなどしています。しかしながら、被害防止には、個々人の取り組みに頼るだけでは限界があります。
今後も人口減少や高齢化によって私たち人間の生活圏が縮小し、農家人口の減少や耕作放棄地の増加が懸念される中、鳥獣被害を防止するためには地域を挙げた一体的な取り組みが欠かせません。
また、被害の未然防止の観点から、鳥獣を寄せ付けないための圃場周辺の草刈りや地域を挙げた動物の追い払いの実施など、一人一人ができることを考え、動物が人里に近づきにくい環境づくりをしていくことも重要です。
自分たちの地域を自分たちで守っていくため、町・関係機関・住民が一体となった被害防止にご理解とご協力をお願いします。

■侵入防止柵を効果的に設置しましょう
岩手県農林水産部農業普及技術課 農作物野生鳥獣被害対策アドバイザー 中森忠義さん
鳥獣が圃場や集落に侵入しないように電気柵などの侵入防止柵を設置しましょう。設置する際には、電気柵の適切な段数や鳥獣に応じた地上からの高さ確認、ワイヤーのたるみ改善、漏電チェックなどが重要です。
また、農作物のほか、放置果樹、生ゴミなど身のまわりの思わぬものが鳥獣を引き寄せるため、圃場や集落、家のまわりの環境の改善が重要です。特に「草を刈る」ことは、野生獣の休憩場所を無くすとともに、漏電を防ぐことによって「電気柵」の効果を最大限発揮させることにも繋がります。

問い合わせ:農政商工課 農政係
【電話】46-3861

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