八木歯科クリニックの八木一江先生に伺いました
1.はじめに
「人生100年時代」には、生涯にわたって歯と口の健康を保つ「口腔健康管理」を実践することが重要です。
2.8020運動
「8020運動」を知っていますか。「8020運動」とは「80歳で20本以上の歯を保とう」という運動です。高齢になっても自分の歯を20本以上保つことができれば健康寿命を延ばすことにつながります。8020達成率は徐々に増えていき、2016年には50パーセントを超えました。自分の歯でなんでも食べられる高齢者が増えています。また、平均寿命と健康寿命の推移をみると、どちらも少しずつ伸びています。
・8020達成率のグラフ
・2019年
男性平均寿命81.41歳 健康寿命72.68歳
女性平均寿命87.45歳 健康寿命75.38歳
3.口の健康状態が全身に及ぼす影響
口の健康状態が全身に及ぼす影響が明らかになってきました。「成人肺炎診療ガイドライン2024」には、誤嚥性肺炎の項目が新設され、肺炎予防には肺炎球菌ワクチンに加え、口腔ケアが明記されています。
ワクチンで全身の免疫を高め、口腔ケアで口腔をきれいに保つことが確実な肺炎予防法なのです。
4.口腔健康管理
口腔ケアは、本人・家族、看護職、介護職などに頼る管理です。歯磨き、歯ブラシの保管、義歯の清掃・着脱・保管、食事への準備(嚥下体操・姿勢調整)、口腔清拭などがあります。
口腔健康管理には、口腔ケアに歯科医療従事者が行うプロフェッショナルケア(口腔機能管理と口腔衛生管理)が加わります。
高齢者の中には、自身で口腔が汚れていると気づいていない人や自分では口腔ケアができない人が多く、周囲の手助けを必要としています。これには、多職種(医師・歯科医師・薬剤師・行政・看護師・栄養士・介護士など)との連携が重要です。病院から高齢者施設、そして在宅に至るまで、途切れのない口腔健康管理の実施が期待されます。
口腔ケアの実践について、歯科専門職から、家族や多職種への働きかけを継続していきたいと思います。家族が口腔ケアを実践し、口腔環境が良好に管理されているケースや、介護職員へ指導を行い、口腔環境が改善したケースなどがあり、身近に口腔ケアのパワーを感じています。
5.さいごに
口は健康の入口、病気の入口、そして命の入口です。必要とするすべての人に口腔健康管理を届けることで、「救える命」がたくさんあります。プロフェッショナルケアと自分で行う正しい歯磨きの両方を組み合わせて、8020を目指しましょう。歯科医院では歯並びに合わせてどのような歯磨きアイテムを使ったら良いか、どのように動かせば良いかなどのアドバイスも行っています。プロのアドバイスを家庭で実践できれば、日々のセルフケアの質も上がりますので、ぜひ歯科医院に相談してください。
参考資料:日本歯科医師会雑誌、日本歯科医学会、厚生労働省「令和4年歯科疾患実態調査」
問い合わせ:健康福祉課健康増進係
(【電話】0256-72-8380)
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