■ドイツ 車の国 Deutschland Autoland(ドイッチュランド アウトランド)
ちょっと前に読んだネットの記事が『ドイツで有名なものと言えば「車」でしょう』と始まっていました。それを見て、以前された質問を思い出しました。「ドイツでは自動車の速度規制がないって本当?みんな何キロくらいで走るの?」
その人がそう質問した理由は、ドイツの高速道路にあたるAutobahn(アウトバーン)のうち、約30%には制限速度が定められていますが、残りの70%余りには制限が定められていないためでしょう。Autobahn網の片道の長さで考えれば、1万8,115kmには制限がないということになります。その区間に対してあるのは単なるRichtgeschwindigkeit(リヒトゲシュヴィンディヒカイト)(推奨速度)で、130kmとなっていますが、推奨速度を超過することは不法行為でも刑法犯罪でもありません。
制限がないといっても、すべての車両に当てはまるわけではありません。上の図は、ドイツの道路と車両の速度制限を示しています。こうしてみると、乗用車やオートバイ、準中型自動車以外には、常に制限速度が定められています。乗用車の基本的な制限速度は、市街地内では時速50km、市街地外では時速100kmですが、場所ごとに異なる制限速度が指定されることも多いです。市街地内でも住宅地や学校の周りは時速30kmが多いですし、市街地外でも道路にカーブが多いなら時速70~80kmが多いです。Autobahnでも、2車線しかない部分では大体時速100kmや時速120kmです。
では、制限速度が定められていない道路だったら、運転手は好き放題スピードを出せるのでしょうか。
実は、スピードを出せるときは結構限られます。制限速度がなくても、運転のルールはあります。「車両を運転する人は、車両を常に制御できる速度でのみ運転すること」です。
つまり、
・車の速度は道路の状態(乾燥しているか濡れているか)や交通事情、視界、天気の状況、個人の能力、車両と積載物に適合しなければなりません。
・霧や降雪、雨などにより視界が50mを下回る場合、それ以下の速度が要求されない限り、速度は時速50kmを超えてはなりません。
・車両の速度は視認できる距離内で停止できる速度を超えてはなりません。
ということになり、次の4つの条件がすべて揃わないと、好きなスピードを出すことはできないことになります。
・晴れている日
・路面が乾燥しているとき
・他の車がわずかなとき
・車線が4つあるところ
ですが、他の車がわずかなときなんて、ドイツにはほとんどありません。
2021年におけるEU全体の貨物輸送に占める車の割合は77%で、鉄道は17%、内陸航路は6%です。したがって、地理的にEUの真ん中に位置するドイツの高速道路は、時速60kmや80kmでしか走れない貨物自動車で混んでいることが多いです。これらのトラックたちがお互いを追い越すこともよくあり、時速80km以下でしか走れないトラック同士が互いを追い越す間は、高速道路の2つの車線がブロックされます。もし車線が3つ以上あったとしても、追い越し中の時速80kmのトラックなどをさらに追い越す時速120kmの乗用車がそこを走るので、たとえ時速280kmで走りたくても、道路事情がなかなか許してくれないと思います。
ちなみに、ヨーロッパのトラックの運転手さんの間には、追い越すときの習慣があります。トラックの車体は長く、サイド・ミラーを見ても、運転手さんはトラックの車体は長く、サイド・ミラーを見ても、運転手さんは距離感がよくつかめません。なので、追い越される側が「私の前に入っていいよ」という合図として、ヘッドライトをちょっと点滅させます。追い越す側は、前に割り込んだ後、お礼として左右のウィンカーを交互に1回ずつ点滅させます。
私は日本の高速道路の経験は少ないから分からないのですが、日本の運転手さんの間にもコミュニケーションを取る手段があるのでしょうか。
ドイツのAutobahnで思う存分スピードを出せないのには、他にも理由がありますので、次のコラムで紹介します。
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