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個性が光る絵本 平塚の作家たち(1)

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神奈川県平塚市

大人も子どもも楽しい絵本の世界。市図書館では平塚にゆかりのある作家の作品も数多く置いています。今号では、平塚を拠点に創作活動をする3人の作家を紹介します。

◆西野沙織(にしの さおり)さん
静岡市出身、平塚市在住の絵本作家・イラストレーター。保育園などに届けられる月刊絵本を多数制作。『プンとフォークン』『えほんKIRIMIちゃん.わたしシャケのきりみちゃん』(作・絵)や『なまずにいさん』(絵)他。

◇最後にほっとできる1冊 手書きのぬくもり届ける
「絵本のことを考えていられる時間が幸せです」と話すのは西野沙織さん。柔らかく温かみのある画風が魅力の絵本作家です。市図書館事業の親子手作り絵本教室で、講師を務めるなど、地域に寄り添って活動しています。
西野さんは、武蔵野美術大学を卒業後、デザイナーとして広告会社に勤務。楽しく働いていましたが、「自分でイラストを描く人になりたい」と、小学校6年生からの夢だった絵本作家への道に進みました。「昔から、絵本を読んでもらう時間が好きでしたね。母・父それぞれの読み方を、今でも思い出します」と懐かしそうに目を細めます。

・題材は生活の中に
「自然が近く感じられる平塚には、絵本の題材につながるものがたくさんあるんです」
結婚を機に移り住んだ平塚は、西野さんの創作活動にぴったりの環境でした。気分転換の散歩などで見かけた季節の木花などが、絵本の題材として創作の中で思い出されるそうです。
「『なまずにいさん』の制作を始めた頃、散歩中に、相模川で取れたなまずを持っている人に遭遇したんです。快く見せてくださいました。作画の参考になりましたよ」と日課の散歩でのエピソードを語ります。「人もおおらかで、のんびりとしたまちの感じも好きです。心地よく過ごせるまちの雰囲気も、絵本の世界に出ているかなって思います」。

・安心する色と手触り感
西野さんの作品は全て手書き。アクリル絵の具と色鉛筆を使った落ち着きのある色合いで、絵本の世界を色彩豊かに表現します。手描きならではのぬくもりを、読み手に伝えることを大切にする西野さん。「表面に凹凸のある紙を選んだり、筆の跡をあえて残したりしています」と手触り感を伝える工夫を語ります。
「指で触れたときにざらざらする紙の質感や、筆や色鉛筆が紙に引っかかる感覚も好きなんです」とちゃめっ気ある笑顔を見せます。子どもの頃から、手元でできる創作が大好きな西野さんにとって、その感覚も絵本作りの楽しさの一つ。アトリエには絵本の原画の他に、趣味で作った小物(下写真)が並びます。

・想像膨らむ「遊び」
わくわくしながらページをめくるのが楽しい絵本。西野さんは、文と絵を両方担当するときも、絵だけを担当するときも「少しの遊び」で読み手を楽しませてくれます。「物語の本筋は大切にしながら、主人公とは違う視点を入れられるのが絵の楽しさです。文章にはない、少しの遊びを入れています」とほほ笑みます。例えば、人間の男の子が、次々に集まる動物たちと遊ぶ物語には、文章にいない大小さまざまな動物も描かれています。その効果は紙面をにぎやかにするだけではありません。「繰り返し読んだときに、文章にいない動物のストーリーを想像したり、ページごとの表情の違いを発見したりできたら楽しいなと思って描いています」。
ページいっぱいに広がる絵本の世界。何度でも楽しめる西野さんの工夫と少しの遊びが詰まっていました。

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