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長崎県立大学 シーボルト校研究紹介 Vol.46

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長崎県長与町

◆感性を科学する:感性工学によるヒトの感覚・感性の理解とその応用に向けた取り組み
情報システム学部 情報システム学科
山﨑陽一 准教授

私は感性工学を専門としています。感性工学は、感性の働きに注目することで、新たな価値をつくり、価値を交換することによって、産業・経済・文化の発展を支える科学技術です。具体的には、製品・サービスの設計パラメータにおける物理要因と、それらが喚起する感性的反応(価値,感情,印象など)を計測し、得られた感性量を真値(ground truth)として物理量との関係をモデル化することによって、物理要因により喚起される価値や印象を定量化・可視化し、逆に価値や印象をもたらす物理要因を求める技術です。
近年、持続可能な社会を築く上で、一人ひとりが多様な幸福(well-being)を実現することは欠かせません。この幸福を実現するためには、個々の価値や嗜好に合わせたプロダクトやサービスの提供が必要であり、そのようなパーソナライゼーションやカスタマイズを実現するための方法論が求められています。私の研究室では、感性工学の観点から、その実現において鍵となる多様な感覚や感性の数理的な理解の獲得を目指し、ヒトの感覚や感性の指標化及び計測技術の研究開発に加えて、機械学習や人工知能技術などの情報技術を活用した感性モデリングに取り組んでいます(図1)。
一例として、製品・サービスに触れることで感じる「触り心地が良い」「心地よい」といった感性価値を分析することで、計測方法の構築、数理モデルを開発し、製品が提供する価値のデザインを可能にしています。具体的には、ふきとり化粧水が提供する感性価値が、「肌への摩擦感」と「ふきとった実感」の2つの触感要素から形成されることを明らかにし、これらの触感をふきとり化粧水塗布時の振動情報から計測する方法を開発しました(図2)。これにより、前述の触感要素を高める化粧水の処方を模索することが可能になり、より高い感性価値を提供するふきとり化粧水の開発に成功しました。
私の研究は、このように製品・サービスが提供する感性価値のデザインを可能にするものであり、より豊かで快適な地域社会づくりに貢献するものです。さらに、人の感性をデジタル化し、人間に近い感性を持つAIの開発にも繋がります。また、これらの取り組みは、ヒトの感性に関する認知的メカニズムの解明につながる可能性も秘めています。今後も、感性工学の観点から、より良い社会の実現に向けてヒトの感性に関する研究開発に取り組んでまいります。
・図1、図2は本紙P.25をご覧下さい。

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