いなばけんいちさん
絵本作家
■身近な世界から広い世界へ目を向けて
会社員として働くかたわら、絵本作家としても活動する田京在住のいなばさん。先日、絵本『たべものもったいない』を市内の各幼児施設・小学校・図書館へ寄贈しました。
いなばさんが絵本づくりを始めたきっかけは14年前、当時幼稚園児だったお子さんが描いただるまの絵。昔から図画工作が得意で、大学で日本文学を学んだいなばさんは、「息子を喜ばせたい」との思いから、そのだるまを主人公にした絵本を手作りしてみました。
その後も趣味で何冊か絵本を作りましたが、あるとき新聞のコラム記事を読んで衝撃を受けました。「世界中の約8億人が飢餓に苦しんでいる一方で、食品ロスが約13億tトンもある。飢餓と食品ロスの矛盾した現実を、広くみんなに知らせたい」と思ったそうです。そのために自分ができることを考えた結果が、子どもたちに世界の現実を伝える絵本をつくることでした。そして、絵本『たべものもったいない』が誕生しました。
この作品は当初、ネット公開のみでしたが、読者の反応を受け、時間をかけて加筆・修正し、紙の絵本として出版しました。絵本には、狩野川や城山など伊豆の国市の風景によく似たまちが登場します。いなばさんにとって伊豆の国市は、「子どもの頃にさまざまな体験をし、宝物のような思い出が詰まっているまち」。そんな宝物を絵本に登場させたのは、「大きな問題をテーマにしているけれど、まずは絵本を楽しんでもらいたいから。身近で親しみやすい世界を足掛かりにして、社会や広い世界に目を向けてくれたらうれしい」と話します。風船につかまって世界を旅した絵本の主人公『だるちゃん』のように、いなばさんの思いも世界へ向いています。
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