■育児休業
労働者が、原則としてその1歳に満たない子を養育するために取得する休業。就業先の規則の有無に関わらず、取得することができる。
厚生労働省「育児・介護休業法の概要」「育児休業制度特設サイト」参考
▽育児休業取得率の推移(%・抜粋)
※令和5年度は、産後パパ育休の取得者も含む。
人の一生に存在する節目の数々。進学・就職・結婚など、その人のライフスタイルを大きく変えながら、それらは人生の忘れられない記憶として刻まれる。「出産」もそうであろう。親にとって子どもを授かって出産をすることは、生活を一変させることだ。子育て期を振り返れば、思い出として語り草にもなるが、目下その状況に直面している夫婦は、日々悩みが尽きない。共働きの家庭であれば、仕事と育児をてんびんにかけた選択の毎日を送る。
令和5年度の厚生労働省の調査によれば、女性は84.1%が、男性は30.1%が、育児休業(=育休)を取得している。夫婦2人の子どもではあるが、女性が主に育児を担う家庭の現状が垣間見える。
しかし近年、男性の育休は変化している。令和5年度に取得率が初めて3割を超え、その期間は2週間未満が減少し、それ以上の取得者が増加している(「令和5年度雇用均等基本調査」より)。また、令和7年4月1日からは企業の規模に応じて次の2点が義務化される。
・子どもが3歳から小学校に入学する前までの間、従業員がテレワークや時差勤務など、複数の選択肢から働き方の選択を可能にする。
・従業員数300人を超える企業は、男性の育児休暇取得率を公表する。
法整備と企業の努力により、育休を取る仕組みは整いつつある。しかし、依然として存在する、男女間の育休取得率の差。そのギャップを埋めることができれば、子育ての負担は、分かち合いやすくなるだろう。誰もが希望すれば育休を取得できる社会は、家庭の課題を解決する一助になる。
■「パパのキモチ」育休取得に対する働く男性の思い
厚生労働省が実施した調査によると、令和4年度に育児休業制度を「利用したことも利用希望もない」と答えた正規男性社員・職員の割合は、33.5%で最も多い回答となった。また「利用したことはないが、利用したかった(利用したい)」との回答は、29.1%(図1)。実に6割を超す働く男性が、育休を利用しないという現実が示された。
なぜ、男性は育児休業制度を利用しないのか。同調査によると「収入を減らしたくなかったから」が最も多く、続いて「職場の雰囲気、上司などの理解不足」が挙げられている(図2)。これらの結果から「育休は取らない」と決めた男性であっても、意思決定の過程においては家族を養う責任や、職場の仲間を思う気持ちが影響したのではないかと推察される。それら外的要因により育休を諦めざるを得ないのであれば、周囲の理解や制度によって、克服する手だてを考えたい。家族にとって子育ての時間は、時限的でかけがえのないものだから。
▽末子に関して育児休業制度利用状況(図1)
▽末子の育児に関して、育児休業制度を利用しなかった理由(複数回答)(図2)
※グラフはいずれも厚生労働省令和4年度仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書〈労働者調査〉より
■子育て中の女性が抱える悩みを知ったことは貴重な経験です
飯塚賀幸(いいづかよしゆき)さん 泰玄(たいげん)くん(三男/1歳9カ月)
職業:会社員
家族構成:妻、長男(4歳)、次男(2歳)
▽分担して生まれるゆとり
2人目が生まれた半年後から、育休を取りました。当初、考えていなかったものの、年の差がわずかな子どもたちを育てる妻を思い、取得を決意しました。家事・育児を分担したことで、負担は半分ずつに。そうすると、お互いにゆとりが生まれます。子どもたちを寝かしつけたあとは、家族の将来について話し合うなど、有意義な時間を過ごすことができました。
▽子どもをよく知る
休暇中は、子どもの定期検診にも参加しました。日々の成長を実感する場に立ち会い、常に身長や体重を把握できたことがうれしかったですね。他のお父さんよりもわが子について知っている自信があります。育休を快く受け入れてくれた職場の皆さんには、感謝の気持ちで一杯です。
▽女性が感じる悩みに共感
育休明けに印象的だったのは、復帰した初日。多くの大人との会話に違和感を覚えました。振り返ると、長く子どもと接した時間は、うれしくもどこか社会と断絶した状態。子育て中の女性が感じる孤独はこれだと思うとともに、社会とつながる必要性を実感しました。
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