くらし とよひら区 リンゴの今昔

かつて、豊平区はリンゴの一大産地でした。リンゴ園がなくなった今も、環状通のリンゴ並木をはじめ、ゆかりの深いものとして地域に根付いています。今月は、明治時代から現在まで続く、区とリンゴの歩みについて紹介します。

■区とリンゴの歴史を振り返る
明治2(1869)年、北海道開拓の父ケプロンの「リンゴは寒い土地でもよく育つ」との提言により、道内各地でリンゴの栽培が始まりました。明治8(1875)年ごろには平岸地区へ425本の苗木が配られ、区内で栽培が始まると多くのリンゴ園が誕生しました。当時のリンゴは「平岸リンゴ」「札幌リンゴ」と呼ばれ、親しまれました。やがて海外にも輸出されるようになり、国内有数のリンゴの産地として知られました。
その後、高度経済成長期の宅地開発などにより、リンゴ園は次々と姿を消しました。現在は、リンゴ園の名残としてリンゴ倉庫がいくつか残る他、歴史を後世に伝えようと、天神山に「札幌平岸林檎園記念歌碑」が建てられています。昭和49(1974)年には、「札幌の街に赤いリンゴの実る並木通りを」という当時の市長の提案により、環状通の中央分離帯に、80本のリンゴの木が植樹されました。毎年およそ2千個もの実を付ける、全国でも珍しい並木として現在も道行く人たちの目を楽しませています。

■区のリンゴを今に伝える
▽リンゴを使った総合学習
平成25(2013)年より美園小学校の4年生を対象に、区のリンゴを題材とした総合学習を行っています。「文字入りリンゴ」の制作や収穫体験などを通し、地域の歴史やまちづくり活動を学んでいます。

▽地元で育ったリンゴを贈呈
区ではリンゴ並木を活用した事業の一環で、区を拠点として活動するスポーツチームに、応援の意味を込めて並木で育ったリンゴを贈っています。他にも区内の児童養護施設などに寄贈しています。

▽一口めも
豊平区のシンボルマークは、豊平区の「と」の字と、区のシンボルであるリンゴを全体で表現しています。
また、区のマスコットキャラクターである「こりん」はリンゴをモチーフにしており、区民から愛されるキャラクターになりました。

■リンゴのこれからを見守る
環状通にリンゴ並木が誕生した翌年の昭和50(1975)年、収穫目前のリンゴが何者かに持ち去られたことをきっかけに、地域住民による「美園リンゴ会」が設立されました。
以降、収穫期には会員が交代で毎朝並木の見回りを行っています。他にも並木沿いの花壇の整備や地域行事の主催、美園小学校の総合学習の支援などを行っています。

▽お話を伺いました
一番やりがいを感じる瞬間は子どもたちの笑顔を見た時です。リンゴを収穫した時のキラキラした目や楽しそうな姿を見ると、今年も無事にリンゴが実って良かったとうれしい気持ちになります。これからも活動を通し、多くの子どもたちや若い世代の方にリンゴ並木への愛着を感じてもらい、地域の活性化につなげたいです。
美園リンゴ会 稲葉郁夫(いなばいくお)会長

問合せ:地域振興課まちづくり調整担当係
【電話】822-2427