- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道歌志内市
- 広報紙名 : 広報うたしない 令和7年5月号
■「春の息吹」
私がずっとブラジルで心底見たいと思っていた風景、それは雪国の春の始まりの、ほんの短い間だけに咲く小さな花々で埋め尽くされた「花の絨毯(じゅうたん)」の風景です。
まるで北海道の春の青空のような色の「エゾエンゴサク」という花の群生。
少し紫がかったり、薄紅色だったりの微妙なグラデーションが、まるで水彩画のようで…。
こんな風景は、山の奥深くに行かないとなかなか見られないはずなのですが、歌志内では私がぶらぶらと散歩できるような場所でこの花の群生を見つけることができるのです。
昨年、ブラジルから帰国したばかりだったこともあり、その美しさを目の当たりにしてうれしさで胸がいっぱいになりました。
栽培種の花にはない、野生の草花の清楚(せいそ)な姿。この青空色のエゾエンゴサクと一緒に、純白のニリンソウが混ざって咲くと、その透明感はまるで絹のスカーフをふわりと広げたかのようです。
そしてなにより、こんなにも繊細で、今にも壊れそうな花たちがあんな重たい雪の下にいたはずなのに、それを突き抜けてたくましく芽吹くということに私は深く感動するのです。うれしい春の始まりですね。
〔地域おこし協力隊 石井葉子〕