くらし UPDATE!!地域おこし協力隊(revitalize the community)

今月の担当:布廣(観光振興推進員)

■農業と星のつながり
6月はさまざまな作物の実りが多くなり、収穫が本格的に始まる時季です。新篠津村にとっても関わりの深い農業ですが、古来の農民たちにとっては、夜空に見える星々もその営みを支える指標のひとつでした。
地球は約24時間かけて自ら一回転(自転)しながら、約365日かけて太陽の周りを一回転(公転)しています。地球上の同じ場所から同じ時刻に夜空を観察すると、星座の星は一日ごとに少しずつ西側へとずれていき、約365日かけて天球を一周し、ほぼ元の位置へと戻るように見えます。その規則正しい星の位置の変化などを活用して農耕を行っていました。そんな農業と星にまつわるお話を一部ご紹介します。

◆アークトゥルス(うしかい座の一等星)
春の時季に見られるオレンジ色の明るい星です。ネクタイのような形に星々をつないでできるうしかい座、そのネクタイの結び目のところで輝いています。日本では麦の収穫が行われる6月頃になると、日の入り後に暗くなっていく空のてっぺん近くでアークトゥルスを見られるようになります。このことから『麦星(むぎぼし)』『麦刈星(むぎかりぼし)』などとも呼ばれて親しまれてきました。

◆シリウス(おおいぬ座の一等星)
古代エジプトでは、ナイル川が定期的に氾濫することを利用して農業が行われていました。ナイル川の増水が始まるという判断は、日の出直前にシリウスが東の地平線から昇ってくる日を基準に行われ、この日を新年の始まりとして暦(カレンダー)を定めていました。その後、さらに細かい調整がなされていき、現在使われている暦へとつながっていきます。

◆北斗七星(おおぐま座の尻尾の星並び)
春の時季に空のてっぺん近くで見られる、スプーンの形に並んだ7つの星々です。特徴的な形からさまざまな地域で分かりやすい目印として親しまれ『ひしゃく星』『四三(しそう)の星』『七剣星(しちけんぼし)』などいくつもの異名を持っています。新しのつ米にもなっている銘柄『ななつぼし』の名は、北海道の地から見られる美しい北斗七星をイメージしてつけられました。

◆おとめ座(一等星スピカが目印の春の星座)
ギリシア神話に登場する豊穣の女神デーメーテールを描いた星座です。彼女は農業をつかさどっていましたが、ある日我が娘を冥土の神によって冥界へ連れ去られた悲しみから仕事が手につかなくなり、地上では作物が実らない事態になりました。神様たちは話し合い、1年のうち期間限定で娘を彼女の元へ帰すことに。その結果、娘と過ごせる8ヵ月間はデーメーテールが仕事にはげむことで植物に恵まれる春夏秋が、娘が冥界へ行く4ヵ月間は悲しみに暮れ草木が枯れ果てる冬がやってくるようになりました。

現代では、天文学や暦の発展により、星を目印にして農業を営んでいる農家さんはほとんど見られなくなりました。種蒔きや収穫の時季に空では星々がどのように輝いているのかを観察してみることで、普段とは少し違った星空の魅力を感じられるかもしれませんね。