くらし ≪特集≫学び、輝き、30年 レディースファームスクール開校30年(1)

◆開校30周年
新得町に女性のための農業研修施設として誕生したレディースファームスクールは、本年で開校30周年を迎えました。これまでに多くの女性たちが全国各地から集い、酪農をはじめとする農業の知識と技術を学びながら、それぞれの夢へと羽ばたいていきました。支えてくださった受け入れ農家や地域の皆さんの協力のもと、30年にわたって築かれた学びと絆の歩みを振り返ります。

◆未来を紡ぐ学舎
平成8年8月、上佐幌基線に「新得町立レディースファームスクール」が開校しました。
平成5年度に「山村振興等農林漁業特別対策事業」として国の承認を受け、平成7年9月に着工、平成8年6月に完成しました。
建物は2階建てで、1階には講義を行う講習室のほか、農産物加工実習室、畜産物加工実習室などを備え、2階には全寮制の個室が設けられています。開校当時としては全国でも初めての女性農業者育成施設として注目を集めました。
運営にあたっては、地域の関係者による運営委員会が設置され、入校者の選考や実習受け入れなどの支援を行っています。
平成8年度から令和6年度までの修了実績は、修了者が241人となっており、令和7年12月現在は、研修生5人が在籍しています。

◆担い手を育む
新規就農者の育成は、地域農業の持続的な発展に欠かせない重要な取り組みです。レディースファームスクールの取り組みは、女性の視点や力を生かした新たな担い手の育成を目的としており、多様な人材が農業の未来を支える場として、今も大きな期待が寄せられています。

◆レディースファームスクールの研修内容
将来農業に関わってみたいという独身女性を対象に研修手当を受給しながら農家での実習を主体に農業に関する技術と知識を取得できる農業実習を行なっています。

▽酪農コース
牛の乳搾りや餌やりなどの酪農作業全般について1年間に4か所の農家で実習しますので、さまざまな搾乳スタイルを学んでいます。

▽畑作コース
農作物の種まきから収穫までの栽培管理について4月〜10月まで2箇所の農家で実習を行い作物の違いを学んでいます。主にいも・豆類・てんさいなどを生産します。

▽肉牛コース
牛の哺育・育成・肥育をして肉用牛の子牛の世話をします。より良い立派な牛に育てるため、哺育や育成・肥育管理等の肉牛育成作業について実習をしています。

▽全コース共通
週に一度、町内外の農場・工場等の視察や地元関係機関を中心とした各分野の専門家から専門知識を学びます。また、町内の事業所や地域の女性の指導により農畜産物加工実習も行います。

◆レディースファームスクールで見つけた わたしの生き方
▽人との繋がりを大切に
髙橋 未来さん(28期生)
伊藤牧場[新得町]

-女性が安心して挑戦できる
北海道の酪農に以前から強い憧れを持っていました。現場で実践的に知識や技術を身につけられ、女性が安心して挑戦できる環境が整っていると知り、自分の夢への第一歩を踏み出す場として入校を決めました。実際に学び始めてからは、想像以上に多くの学びと発見があり、毎日が新鮮でした。

-支えられながら積んだ経験
実習を通して農業機械に興味を持ち、ホイルローダーなどの操作を練習させてもらいました。最初はとても緊張しましたが、周りの方々が優しく教えてくれて、うれしかったです。少しずつできることが増えていくたびに自信がつき、みんなに支えられながら学べた時間が一番印象に残っています。

-つながりが力になる
研修先で仲良くなった人とのつながりが、今の私の支えになっています。農業の知識や技術だけでなく、人との関わりや助け合いの大切さを学べたことが大きいです。卒業後もそのつながりが続いており、励まし合える仲間がいることが何より心強いです。

-優しさに支えられた時間
スクールで過ごした時間は、本当にかけがえのない経験でした。管理人さんには美味しいご飯を作っていただいたり、悩んだときに話を聞いてもらったりと、たくさん支えてもらいました。研修先の農家の方々も気にかけてくださり、声をかけてもらえたことがとても嬉しかったです。知らない土地で、人の温かさに触れることができたことに感謝しています。

▽仲間たちとの日々が宝物
村上 亜樹子さん(4期生)
村上牧場[清水町]

-大自然に惹かれて
20歳のときに訪れた北海道の大自然に心を奪われました。見渡す限りの牧草地や雄大な山々に触れ、「ここで生きてみたい」と強く感じたのを覚えています。女性一人でも移住できる方法を探していた中で、このスクールの存在を知り、「挑戦してみよう」と決意しました。

-「牛」と向き合う日々
とにかく毎日、自分の体力との戦いでした。朝早くから夜遅くまで牛と向き合い、思うようにいかないことも多くありましたが、乳牛のお世話に夢中になった日々は、今でも鮮明に覚えています。未知の世界に飛び込む楽しさと大変さ、そして命を預かる責任の重さ、どちらも学べた時間でした。

-思い出す、仲間との日々
卒業して20年以上経ちますが、思い出すのは「笑った・楽しかった・支え合った」という時間です。年齢も出身も違う仲間たちと励まし合い、時には泣きながら乗り越えた経験が、今の自分を形づくっていると感じます。スクールから見えた景色も本当に美しく、仲間と過ごした日々は今も宝物です。

-農業を目指す女性のために
ここは、農業を志す女性にとっての“安全基地”だと思っています。迷ったとき、立ち止まったときにも、温かく迎えてくれる場所があるというのは本当に心強いことです。これからもその存在を大切に守り続け、未来の挑戦を後押ししてほしいです。

▽女性が安心して学べる施設
村田 倫子さん(15期生)
村田農場[新得町]

-生産者側から見えたこと
畑作実習では、慣れない作業の毎日で覚えることも多く、体もバキバキになるほど大変でした。また、手間のかかる作物でも、生産者が自分で価格をつけられない現実に直面し、消費者としての視点だけでは気づけなかった「作物の価値」や「食の大切さ」を学びました。

-大きかった仲間の存在
年齢の近い同期が多く、休日に遊びに出かけたり、夕食時にはその日の出来事を話して悩みを共有したりと、仲間の存在が大きな支えでした。今でも連絡を取り合い、みんなそれぞれの場所で頑張っています。個室でプライベートも確保され、美味しい食事や講義、加工実習など、充実した毎日を過ごせたことも良い思い出です。

-受け入れ農家として
実習先の農家のお父さんやお母さん方は、忙しい中でも明るくパワフルで、優しく、時に厳しく接してくれました。その姿に心から尊敬の気持ちを抱きました。今、自分も受け入れ農家となり、その背中に少しでも近づけるよう日々努力しています。

-未経験でも安心して学べる
近年は研修生の減少が課題と聞きますが、農業未経験の女性でも安心して学べるこの貴重な施設を、これからの農業を担う女性たちのためにも、ぜひ続けていってほしいと思います。